魔女の館1
魔女の館は駅から北東に伸びる県道沿いにある。県道と並行するように線路が伸びているが、今はもう使われていない。
「この線路、もう廃線になっているんですわね」
車の後部座席に座るモニカが誰にともなくつぶやいた。
「昔は魔女の館の向こうに鉱山があったらしいけど、今はもう何も取れなくなって電車が使われなくなったんだ。魔女の館、っていうか博物館にはバスが通ってるよ。でも車で行く人が多いかな」
隣に座るミリアは地元民としてそう答える。
「廃線になったの。なんだかさみしいね」
助手席のノルンはなんともなしにつぶやいた。車を運転するスクワーレは表情を引き締めて言う。
「あと5分ほどで着く。全員、気を引き締めろ」
そう話すと、後ろからついてくるバイクに乗ったアイラを見る。魔女の館に車で向かっているのはスクワーレ、モニカ、ノルン、そしてミリアで、アイラは後方からバイクで、間々田さんは後程後続の警察と現場に向かう手はずになっている。ちなみにモググはちゃっかりミリアの膝の上に陣取っていた。
そのとき、車の後ろから一台の車が並走してきた。あわやアイラのバイクが巻き込まれそうになるほど、乱暴な運転だった。
スクワーレは素早くハンドルを切り、路肩に車を止める。並走した車から男が窓から身を乗り出し、手をかざしたのが見えた。
「手洗い歓迎ですわね!」
モニカがミリアをかばいながら言う。車を止めたスクワーレは助手席のノルンに覆いかぶさって守る。男の手のひらから火球が飛び出し、車に激突。衝撃で窓ガラスが一斉に割れた。スクワーレはノルンと、モニカはミリアと素早く車から脱出する。
並走してきた車から、3人の男たちが降りてくる。そのうち2人は手にマシンガンをもってミリアたちに近づいてきた。
「おかまいなしですわね!」
モニカは悪態をつくと、ミリアを素早く車の陰に身を隠す。スクワーレとノルンはすでに車を背に隠れていた。
「アイラは!」
そう叫ぶと、襲ってきた車が反対側のガードレールに突っ込んでいくのが見えた。運転席の男の首にはいつか見たアイラのもう一つの腕があることに気づく。いつの間にかバイクから降りたアイラは、3人の男たちに突っ込んでいく。マシンガンを構えられる前に接近すると、1人目の男の首に回し蹴りを放ち、2人目の男の顎を掌底で打つ。3人目の男が手のひらから火球を放つが、アイラは素早く横に飛んで躱す。さらに追撃を加えようとした男の背後に、いつの間にか現れたモニカが立ち、首を絞めて落とした。
「組織の精鋭があんなに簡単に・・・、さすがモグね」
モググが感心したように話す。
「魔女の館までもう少しだ。このまま歩いて向かうぞ」
スクワーレが言うと、ミリアとノルンも従った。
10分ほど歩くと、魔女の館と言われる博物館が見えてきた。入口には2人の男が警戒しながら佇んでいる。
「東雲くんがどこにいるか、わかるか?」
スクワーレがモググに尋ねると、モググは地下を指さす。
「地下から反応があるモグ。秘密の間は地下にあるモグ。そこでレオくんに洗脳を施そうとしてるのかもモグよ!」
それを聞いてミリアが色めき立つ。
「いそがないと!」
「地下なら裏から回ったほうが早いな」
そうつぶやくと、5人は博物館の裏手に回る。中には組織の人間が慌ただしく移動する音が聞こえるが、5人は隠れながら迅速に移動する。
階段に続く窓にはカギがかけられていたが、どこからともなく出現したアイラの手がカギを開け、窓から静かに潜入するのに成功する。
「便利な能力ね」
ミリアが驚くと、アイラは得意げに笑う。
「こいつを使いこなすまでは苦労したからな」
館内は暗闇に包まれていた。廊下には警備員が巡回している。博物館の職員ではなく、組織の警備員だろうとアイラ。そしてアイラとモニカは素早く巡回警備員に接近すると、彼らの意識を素早く刈り取っていった。
地下を進むと、「映像ルーム」という部屋の前にたどり着いた。人は扉の前に佇んだ。
「この部屋か?」
尋ねるスクワーレに頷くモググ。
「あの部屋からレオの反応があるモグ」
7課のメンバーの活躍で、レオとの対面はもうすぐのところまで来ていた。
だがその時、懐中電灯の光が5人を照らした。数人の男たちが油断なく5人を囲んでいる。中心にいるのは、カルナだった。
「どんなネズミかと思ったら、三枝ぁ!! 警察が不法侵入なんてしていいと思ってるのか!」
カルナがゆがんだ笑みを浮かべながら言う。
「不法侵入って・・・、ここは市の博物館ですわよ。不法に占拠しているのはあなた方ではなくて?」
余裕たっぷりに答えるモニカ。スクワーレは後ろの男たちに警戒をあらわにする。
「後ろの男は組織のナンバー1、加見沢ゴウト。その隣はナンバー3の加座巳タクトだな。厄介な・・・・、モニカとアイラはここで奴らを止める。ミリアとノルンは東雲君を!」
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