7番目の魔女
@kotani93
プロローグ
暖かい日差しを浴びながら道路沿いの道を歩く。ゆっくりと足を進めていく途中で、ここが家の近くの公園へ続く道だとミリアは気づいた。
公園の中の奥のベンチに人影があった。その影はミリアと同じくらいの年頃の女性だろうか、ミリアに背を向けてうつむいている様子だった。
なぜだかほおっておけなくて、そのままベンチに近づくと、「大丈夫」と声をかける。顔を上げた彼女の目は赤く、頬はぬれていた。
名前は思い出せないけど、顔もしらないようだけど、ミリアは彼女のことをよく知っていることが分かった。
「ほら、泣かないで」
そう言ってハンカチを渡すと、彼女は涙の跡を拭いた。
しばらく泣き声だけが公園に響いた。ミリアは彼女が落ち着くまで、背中をさすりながら見守った。
「・・・、ありがとう」
彼女は小さくお礼を言うと、不器用に笑いながらミリアの顔を見た。その表情に、ミリアは思わず口をとがらせる。
「でもどこいってたの? ずっと探したんだけど」
彼女は申し訳なさそうに「ごめんね」と言葉を返した。
聞きたいことはたくさんあった。そのはずなのに、次の言葉が見つからない。
そんなミリアを見て、彼女は悲しそうな笑顔を浮かべた。
「ごめんね」
もう一度言う彼女の顔は、また泣き出しそうだった。
「なにいってるの。悪いのは私でしょ? ――があやまることなんて何一つないじゃない。アンタはいつも一生懸命だって、何一つ悪くないって、私は分かってるから」
この子にそんな顔をさせたくなくて、反射的に伝えていた。
「うん。ありがとう。ねえミリ、ここ覚えてる? 小さい時、よく遊んだよね。ミリはあの時からおてんばで、ヒョーゴ君にからかわれた私を助けて、やり返してくれたよね。それでいつの間にかヒョーゴ君とも仲良くなって、みんなで一緒に遊んだの。私、今でも時々思い出すんだ」
彼女は昔を振り返り、思い出話を語る。ミリアは小さい時のことを思い出し、顔を赤くする。
「いやあのときは子供だったし、――がいつも一緒だったから」
照れたように言うと、彼女と目が合い、どちらともなく吹き出した。
「なつかしいね」
彼女は言う。その表情がもう戻れない何かに思いをはせているように見えて、ミリアは誤魔化すように言葉を紡いだ。
「――、どこにも行かないよね?」
彼女はうつむくと、決意を込めた表情を見せる。
「私は、まだ私にできることがあるとわかって、嬉しかったんだ」
彼女はまっすぐな目でミリアを見つめていた。
「今度はきっと私がいないから大丈夫。またミリが笑えるように、今度こそ間違えないから」
今度こそ? 間違えない? 疑問に思ったところで、視界がゆっくりとぼやけてきた。
慌てるミリアに彼女は泣き笑いの表情で答える。
「大丈夫。ミリが笑ってすごせるよう、離れていてもできることをするからね」
焦りは募るばかりだった。そして、遠くで目覚まし時計の音が聞こえてきた。頬が強く引っ張られる感覚がある。
「ミリは最後まであきらめないって、私は知ってるから。あなたに与えられた力は破壊なんかじゃない。魔法なんかなくてもミリにはは未来を創る力があるんだから」
そして真っ白な光に包まれた――。
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