[0-2]少女と医師
少しの間、
名前はシャイル、
炎属性で、年齢は
顔に被る上掛けを
無我夢中で噛みつき、相手が怯んだ隙に何とか逃れ、魔法で場所を移動した。直後に胸の痛みが酷くなって声が出なくなったので、本当に間一髪だった。
それにしても、ここはどこだろう。
愛らしい
じっとしていると幾らか痛みもましになったので、今度は慎重に腕を動かし布を
「目が覚めたの?」
聞き覚えのある愛らしい声。勢いよく振り向きたいのを我慢し、ゆっくり頭を向ける。同じく切り抜かれた入り口には厚い仕切り布が提げられていて、亜麻色の間から青色が覗いていた。一番最初にシャイルを見つけた、
「あ……うん。ここ、は?」
「革命軍の
仕切り布から覗く少女は細い眉を寄せて、警戒も
「僕は、そう。でも、人を食べたりなんかしないよ」
「うん。ヴェルクもそう言ってたわ」
やっとの思いで答えれば、少女は首を傾げ応じる。ヴェルクというのはあの大柄な
手の先でそっと身体を探ると、綺麗に
「ありがとう、助けてくれて。僕は、シャイル。革命軍ってことは、ここは
「わたしはフェリアよ。あなたを運んだ人がヴェルクで、ここのリーダーをしているの。この森は無国籍領域だって聞いてるけど、詳しいことは知らないわ」
怯えずに答えてもらえたことを嬉しく思う。調子に乗って起きあがろうとした途端、胸に激痛が走った。
どこかから慌ただしい物音が聞こえ、石床を叩く足音がこちらへ向かってくる。仕切り布を除けて部屋に入ってきたのは長身で白衣の男性だった。
「起きた? 大丈夫? きみ、
「……うぅ、あなた、は」
「俺はここの医師、名前はリーファス。よろしくね」
彼は
種族を知るため耳を確認するのは癖のようなものだが、
「リーフ、ヴェルクはどこ?」
「今は来客中。フェリア、そこに積んであるクッションを取ってくれる?」
「わかったわ。幾つ必要?」
リーファスは少女からクッションを二つ受け取り、シャイルの背側に並べた。痛みを
石材を積み上げて漆喰を塗った、簡素で殺風景な部屋。フェリアが言ったように砦なのだろうと納得した。
手を伸ばせば届く距離で医師のリーファスが見下ろしている。薄青の髪は
晴天を思わせる
「きみの状態を説明するよ。ヴェルクが運んできた時、きみは体の至る所を殴打されて数カ所
「……はい。ありがとう、ございました」
肺に傷という説明にぞっとしてつい慎重に声を出すが、痛みはこなかった。リーファスが笑う。
「どういたしまして。この場所だけど、
「ねぇ、リーフ。シャイルはきっとお腹がすいていると思うのよ」
「あ、そうだね。何か食べられそう?」
問われれば、今まで痛みに
「わたしもお昼を食べ損なったのよ。だから、シャイルと一緒に食べるわ。いま何か持ってくるから待ってて」
返答する隙もなく少女が飛びだしていく。食べ損ねたのは自分が転がりこんだせいだろうか。
「もちろん、この砦にも
「ありがとうございます。でも、どうして」
湖面を思わせる
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