初めての入院は、ぎっくり腰でした

第1話 やってしまった瞬間

 今から2年前の6月、私がまだ某家電量販店で販売員として働いていた頃。まだワクチン接種等もそんなに進んでおらず、今よりもっと未知のウィルスに誰もが警戒心が強かった頃。


 私は初めて救急車に乗り、1週間入院した。



 猫背で姿勢が悪く、元々肩こり首こり腰痛冷え性、仕事のストレスで自律神経ガタガタという、体の不調全部のせだった私は、ひと月に一度、馴染みの整体院で整体を受けて、なんとか日々を生きていた。


 しかし、コロナ禍になってから、職業柄、自分はもちろん、お客様にうつすなんてことは絶対にできないので、できるだけ外出を制限。今考えれば、絶対に要であるし急なのだが、整体院への通院も不要不急だろうと思い、控えていた。


 そして体の不調をいつもより引きずったまま、約1年間、整体にもいかず、ろくなセルフケアもせずに過ごしていると、その日はきてしまった。


 出勤前、自宅でソファに座り、ソックスタイプのストッキングを引き上げたとき、腰のあたりに違和感を感じた。


 高校時代と新入社員のとき、過去2度ぎっくり腰を経験している私は、やばい、と思った。


 前かがみになると出る激しい痛み。座っていると腰が常に痛いし、立ち上がろうとすると、腰がピキッと鳴ったような違和感と痛み。立ち上がってもしばらく歩けない程痛い。完全にぎっくり腰だ。


 しかし、まだ歩ける状態ではあったので、なんとか着替えを済ませ、出社して通常通り仕事をした。


 当時、私の勤めていた店舗は人員が少なく、多層階に分かれた売り場に人を振り分けていた為、担当売り場に自分ひとりでいることも少なくなかった。


 その日も当たり前のように売り場には私ひとりで、お客様から預かった石油ファンヒーターの修理品をメーカーの修理センターへ発送する準備をしていた。


 本体内部に石油が残ったままだと、配送業者に迷惑がかかる為、レジから離れた売り場外の非常階段で石油抜きをしていた時、一度売り場の状況を見ようとそこそこ重量のある石油ファンヒーターを持ちげて振り返った。


 これが地獄の始まりだった。


「あ、痛っ」


 と、声にでるくらい、衝撃みたいな痛みが腰のあたりに走った。


 この日、整体に行っていたら、もしかしたら歩いて病院に行けていたかもしれないし、入院なんてことにはならなかったのかもしれない。


 でも、この時の私は、自分の腰より、仕事を優先した。自分がいなくなったら迷惑がかかる、休めない。と強く思っていた。実際そんなことはないのだろうけど。この時は心身共にボロボロだったのだ。


 その結果、この日から4日後、私は救急車で運ばれることになる。

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