高校デビューの俺は、圧倒的主人公。

男の底辺

入学式

第1話 一条悠

 西暦4000年……第二次世界大戦が終わりを告げて、2050年あまり経った世界では技術革新が加速するとともに魔法が発達した。魔法の技術が確立して以降、戦争は行われなくなり代わりに、魔法を駆使して戦う魔法大戦<ラグナロク>が行われていた。プロリーグも存在するほどの絶大な人気があり、魔法大戦で戦う人たちを騎士と言う。


 そんな平和ともいえる世界のなか、日本のある山の中に一人の少年がいた。


 色彩が失せ、何もかもがモノクロームの風景の中に閉じ込められる冬の中、数多くの獣が存在すると言われている樹海に住む少年は現在一人暮らし。年齢は七歳になったばかりだ。先月までは祖父と一緒に暮らしていたが、祖父は近くの病院で息を引き取ったという。祖父と一緒に生活していた頃は山で獣を狩り、庭で祖父に魔法、体術、剣術を習っていた。

 ただただ娯楽もなければ、家族もおらず、狩りと鍛錬だけをする生活。そんな無機質な生活にも終わりが突然やってくる。


 朝日が眩しく、眉間の辺りがこそばゆくなり目が覚める。周りを見渡すと自分よりもはるかに大きい人達に囲まれていたため彼は、非常に困惑した。それもそのはず、昨日まで自分ひとりしかいなかったはずなのに、目が覚めると自分は十数人の大人たちに囲まれているのだから。

 その集団の中にいる一際凄みのある男性が言った。「これから君は一条家の息子として、一条悠として生きてもらう」と。

――――少年は唖然としていた。



 一条家、それは現在の日本において最も財と権力を持つ名家の一つである。一条家当主、一条政宗の話によると、自分を育ててくれた祖父は政宗の父、一条信玄であり自分は一条家との血のつながりはなく、現在では珍しい捨て子だった。

 祖父の遺言は自分を養子として引き取ることと、一条家の次期当主として育てることだった。

 

 車で移動すること約二時間、一条悠は一条家の屋敷のある東京に到着した。車内から見る景色はいままで生活していた場所とは百八十度も違うものだった。

 至る所に高く建造された人工物は悠にとって未知なモノであり、興味の対象物であった。

「あの高い棒みたいなモノは何ですか?」と政宗に聞いた。

「あれは我が社が所有するビルで、この辺はほとんど一条家の傘下の会社だよ」

 悠は他にもいろいろ聞いていた。屋敷に辿り着くまで、悠は政宗に質問攻めしていた。

 政宗にとって、そんな悠が可愛いくて仕方がなかった。


 屋敷に辿り着いた。車から降りると使用人が勢ぞろいして「おかえりなさいませ、政宗様」と挨拶をした。

 はじめて見る光景の中、悠は政宗に抱えられながら、とても大きい屋敷へと入っていくのであった。


 玄関で待っていたのは、凛としていて美しい女性と、その女性の背中からひょっこり顔だしている可愛いらしい女の子だ。

「これから君と一緒に生活する母と妹だ」

 政宗がそう説明すると、きれいな女性がころころと転がる子犬を見るような目で「今日からあなたの母となった一条沙織です。よろしくね」と言って、政宗から奪うようにして悠を抱き上げた。

 頬をスリスリされながら悠は「よろしくお願いします」と挨拶をした。

 一連の流れを終えて、ようやく地上に降ろされた悠は、恥ずかしそうにこちらを見ている少女に近づき「一条悠です。よろしく」と挨拶した。

「…………くら……」

 何も聞こえなかったので「ごめん。もう一度名前教えて」と優しく聞くと

「……一条さくら……です」

 一条さくらは俺より、二つ歳が若い可憐な少女だった。

 もしかしたら俺のことを嫌ってるのかなと思っていたのだが、数時間後にはすっかりお兄ちゃんっ子になっていた。

 「お兄ちゃん、さくらに絵本読んで」「お兄ちゃん、こっちについてきて。さくらが部屋案内してあげる」などなどすっかり仲良くなっていた。


 悠は14歳になっていた。現在は小学校も中学校も通っていない。理由は多くあるのだが、一つの理由として7歳まで世間からはなれていたこともあり、常識を何も知らないということ。それを危惧した母は高校生になるまではいろいろなことを経験させるために学校には通わせなかった。

 母曰く、俺は世間一般的にみてもイケメンらしくモデルや俳優のお仕事の経験もある。最近では父である政宗の側近として会社経営などの勉強をしている。

 肝心の学業はというと、母や家庭教師に教わっており、高校卒業程度の勉強まで済ませている。



 15歳の誕生日を迎えた俺は、国立騎士育成第一学園の入試を受けに来た。通称第一学園と呼ばれるこの学校は中学から大学までの一貫教育の学校で、全国に七校あるうちの一つだ。

 妹のさくらも中等部に進学しており、成績がいいと聞いている。

 そんな第一学園に外部から入学できる生徒は片手で数えれる程度だ。

 

 試験は実技も含めたものでやや実技に大きな比重を占めており、おそらく合格は間違いない。

 しかし、座学でわからない問題があったので満点は難しいだろう。


「早く家に帰って家族に合格したことを伝えなきゃ。まだ正式な発表はまだだけどね(笑)」

 そんな楽観的な彼を中心として、この学園は一大旋風を巻き起こす。


 顔良し、頭脳明晰、圧倒的に強い一条悠の主人公最強物語の続きも絶対見てくれよな!(筆者からの切実な願い)

 


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