ゴリラとサキ
おぉんゴリラ
第1話ゴリラとサキ
「なあサキ、お正月ってのは楽しいもんだな、一年ていう区切りはそんなに大事か?」
1匹のゴリラはバナナを頬張りながら隣の女性に話しかけた。
「そうだね、人間は一年ごとに何があったのか考えるし何年後には結婚したいとか予定を立てるわね」
「ふーん」
街は新年あけおめといった感じでみんな楽しそうしている、ゴリラにはその感覚がまだ目新しいのだ。
「ねえ、一体何本食べるつもりなの?」
「これで最後だよ」
最後のバナナを口に放り込んだ後、ゴリラはバナナの皮を持っていたゴミ袋に入れ、口を腕で拭いた
「ちょっと、ティッシュとかハンカチで拭きなよ」
「えぇ、ジャングルではこれが普通なのに、、、」
「ここは日本だからそれはやめて」
「しゃーないなぁ、やめるよ」
渋々と承諾したゴリラは再び街を眺める。
都会の街並みにまだ慣れていないので何もかもが新しく見える。
アスファルトのジャングルの匂いは植物だらけのジャングルとは違い建築物だらけの東京の街並みは眺め
ているだけで面白いもんだ。
もちろんジャングルも悪くないが、緑だけの景色よりは色々なものがある東京の方が若いゴリラには楽しかった。
「ついたついた」
アパートの鍵を開け中に入るとそこはゴリラとサキの部屋だ。
二人はジャングルで出会い、ゴリラはそのままサキに誘われ日本に来た。
それからはゴリラはバイトをしながらサキの家で暮らしている。
2LDKのアパートで2人暮らしにはちょっとは余裕のある間取り、二人は中に入り買い物袋を置いた。
リビングに入ると観葉植物が多い。
ゴリラが緑が欲しいと言い出したからサキが置いたものだ。
サキはあまり物にこだわりがないから、と荷物もシンプルだし服も決して多くはない。
ミニマリストとまではいかなくとも似たような感じだ。
「なあサキ、これ面白そうじゃないか?」
コーヒー淹れながら顔を上げるとゴリラが指差すほうを見るとそこにはそこには流行の恋愛ドラマが写っていた。
サキは少し驚いた。
恋愛への興味があるゴリラだと?
これまでのゴリラの行動といえば少し野生味のある行動ばかりでワイルドな印象しかなかったからだ。
だが恋愛ドラマを見て面白そうというからには自分もしてみたいという想いがあるのかもしれない。
「そ、そうなんだ、一緒に見ようか」
ゴリラの恋愛志向がどのようなものか気になる。
だから自然に一緒に見ようかという言葉が出た。
隣に座ってしばらく一緒にテレビを見ていると思ったそろそろラストだし、これキスシーンくるな、と。
「どうなるんだろな」
ゴリラは続きが気になってしょうがないようだ。
「どうなるんだろうね」
知らないふりをして誤魔化す。
そしてキスシーン。
「おぉ」
「ゴリラはこういうことしたいの?」
「してみたい、、かな」
意外とウブなのか、このゴリラ、可愛いところあるじゃん。
そう思ったサキ。
ゴリラは初めて見る恋愛ドラマというものに夢中でテレビに釘付けだ。
ゴリラがテレビを見ているというのもシュールで少し面白い。
これからも一緒に生活していけばもっとゴリラのこと知れるかな。
そう思ったサキは少しワクワクしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます