第34話 光の強化と「お守り」

 皆が具体的な潜入捜査などをしている間、それを知らない透子は、一人で特訓を重ねていた。



 一磨さんが誰かを連れてやってくる。

「透子、ちょっと休憩だ」

 そう言うと、私のタオルを投げてよこした。

 それで汗を拭きながら、一磨さんの隣の人にペコっと挨拶をする。

「君が一磨たちと組んでるプリズムか」

 私は、一磨さんの顔を見る。

「隣の市のプリズムだよ。孝志郎こうしろうっていうんだ。俺らは『コウ』って呼んでる」

「あ……はじめまして。望月透子です」

「名字は名乗らないほうがいいぞ」

 孝志郎さんは言った。


「一磨から、『光』の性能について聞かれてな」

「性能……ですか」

「もっと強くならないものか、と」

「はあ」

「見ていろ」

 そう言うと孝志郎さんは、私が練習していた木の板でできた的に光を撃った。

 

 バキッ!!


 物凄い速さと強さで光が撃たれ、的は粉々に砕け散った。


「えっ?!」

 私は驚く。

「光で物理的に破壊できるんですか?!」

「集中力と、呼吸法の問題だ」

「それだけで……?」

「あと、お前たち、自分のプリズムの浄化はちゃんとできているか?」


 ジャラッ……一磨さんと私は、それぞれ自分の首からかけてあるクリスタルのプリズムを外して、孝志郎さんに見せた。


「酷いな。透子のは浄化の力が足りてない。貸してみろ」

 孝志郎さんは、そう言って私のプリズムに念を入れるように手で包み込んだ。

 それを返される時、なんだか少しだけ重くなったような気がした。

「次、一磨のだ」

「俺のは、仲間が浄化してるぞ?」

「それ以前の問題だ。まったくツヤが見えなくなってるぞ。もっと綺麗に磨いておけ」

 そう言うと、一磨さんのも孝志郎さんが浄化し、クロスでゴシゴシと磨いた。


「的に光を当てるというより、光を的の一点に集中して撃ち抜くイメージで撃て」

「イメージ、ですか」

「それから呼吸法だ」

「呼吸法……」

「お前たち、光を撃つ時、息を止めて撃ってるだろう?」

 確かに。力を込めて撃つと、息を止めてしまっているかも知れない。

「息を全部一気に吐き出す感じで撃つんだ」

「一気に吐き出すんですか」

「難しかったら、声を出しながら撃て」

「あ〜、なるほど」


「あの的に、二人の力を合わせて、やってみろ」


 イメージして、気を吐くように……

「行くぞ、透子」

「はい!」

「せーの」

「「ハーッ!!」」


 バーンッ


 的は半分に折れた。

「凄い……」

 私は自分の掌を見る。今の感じは何?

「力が無駄なく伝わる感じがするだろう?」

 孝志郎さんが言う。

「まさに……です。ホントにそんな感じ」

「凄いな……自分にここまでの力があったなんて知らなかった」

 一磨さんも、自分の掌を見ていた。


「その感じを忘れるな。今は二人でその程度だが、訓練次第、経験次第で一人でも同じくらいのパワーが出せる筈だ」


 孝志郎さんは、そう言って、去ってしまった。


「透子、特訓だ!」

「はい!」


 森の中に、私たちの訓練の声が響き渡った。



 クリスタルで作られたプリズム。

 最初は、シエルさんが「お守り」として作ってくれた物だった。

 一磨さんたちと出逢って、これによって光が撃てる能力を得られることが分かった。


 これは、プリズム以外の人が持っていても「お守り」になるものだろうか……。



 いつもの集会が終わって、一人店に残った。

「透子さん?」

 シエルさんが不思議そうな顔で私を見る。

「シエルさん、お願いがあるんです……」

 私は、シエルさんでないとできないお願いをした。


「速水さんにもお守りを作ってあげてほしいんです。危ないことに巻き込まれないように……」

「お守りを……ですか。…………わかりました」

「すみません、なんか無理言って」

 私がそう言うと、シエルさんは、工房へと私を招き入れた。

「作る人の思いが込められるものです。僕よりも、透子さんが作ってあげたほうが速水さんも喜ぶと思います」

「で、でも……」

「作り方なら僕が教えます。大丈夫」

 シエルさんはにっこりと笑った。


「石は浄化する必要があります」

「じゃあ、清羅ちゃんにでも……」

「クリスタルは、あなたの持つ光で浄化することができると思いますよ」

「え……これに光を撃つんですか?」

「撃つのではなく、包み込む感じで。……光の力は加減ができるものだと、以前一磨さんから聞きました」

 そう言えば、孝志郎さんも、掌に包んで浄化をしていた。

「弱い光で……ということでしょうか?」

 うんうんと、シエルさんが笑って頷いた。

「なるべく月の力の強い日がいいと思います」


 大きな満月の夜。

 窓を開けて、月の光を浴びながら、クリスタルに優しく光を当てる。クリスタルがキラキラと輝く。最後に、ふっと呼吸をするかのように、石は光を吸い取った。

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