ペ・ジウの日記

久坂裕介

第1話

 私、大韓民国の女子中学生、ペ・ジウは自分の部屋の机の椅子に座っていた。日課の日記をつけるためだ。


   ●


 202X年XX月XX日


 私は明日の焼肉パーティーを楽しみにしている。なぜ、パーティーかというと、明日は朝鮮戦争の終戦記念日だからだ。


 一応、朝鮮戦争が終戦を迎えた経緯を整理しておく。


 きっかけは私のお父さんだった。私のお父さんは産業通商資源部の官僚だ。具体的にそこは、どういう仕事をしているのかググってみた。


 商業・貿易・工業、外国人投資、産業技術研究開発政策、エネルギー・地下資源に関する事務を取り扱う……。うん、何となく、分かった。


 とにかく、お父さんは考えた。何とか停戦中の朝鮮戦争を終戦に出来ないかと。

 そこで目を付けたのが、朝鮮民主主義人民共和国の鉱物資源だ。それはマグネサイト、銅、コバルト、黒鉛、亜鉛であり、埋蔵量は3000兆ウォン(約300兆円)相当とする推計もあった。だが、採掘する設備が旧式だった。


 お父さんは、計画を立てた。

 1 採掘する設備を大韓民国が最新のものに更新して、効率よく採掘出来るようにする。

 2 採掘した鉱物資源を、大韓民国が朝鮮民主主義人民共和国から買い取る。

 3 それをアメリカに売る。


 お父さんの目的は大韓民国が仲介して、アメリカと朝鮮民主主義人民共和国を間接的にビジネスパートナーにすることだった。

 そうすれば朝鮮民主主義人民共和国は外貨を獲得できてウイン。アメリカは鉱物資源を手に入れてウイン。朝鮮半島の緊張が緩和して大韓民国もウイン。ウインウインではなく、ウインウインウインだ。


 だが当時、朝鮮民主主義人民共和国は国連から経済制裁を受けていて、大韓民国は物資を持ち込めなかった。


 しかし、この計画は上手くいけば、朝鮮半島の非核化に持ち込めると考えたアメリカは手を打った。

 朝鮮民主主義人民共和国と間接的にではあるがビジネスパートナーになり、お互いに信頼関係を結べれば、核とミサイルの開発を止めさせる、と国連を説得した。


 その結果、朝鮮民主主義人民共和国の経済制裁は解除され、間接的にではあるがアメリカと朝鮮民主主義人民共和国はビジネスパートナーとなった。さすがは超大国、アメリカである。


 ビジネスは順調に進み、数年後、アメリカと朝鮮民主主義人民共和国の間に確かな信頼関係が生まれた。

 そして各国の思惑が一致して、朝鮮戦争は終戦を迎えた。


 朝鮮民主主義人民共和国は、もう必要がないとして、核とミサイルの開発を止めた。更に拉致犯罪が確定していた拉致被害者を帰国させた。韓国、中国、タイ、レバノン、ルーマニアの人々を。もちろん日本人も全員、帰国させた。


 私は、あまり日本が好きではない。だがNiziU(にじゅー)の『Make you happy』は好きだ。ありがとう、J・Y・PARK。


 話を戻すが明日の、我が家の恒例の朝鮮戦争終戦記念日の焼肉パーティーが楽しみだ。


   ●


 私は日記帳を閉じると、パジャマに着替えてベットに入った。そして、つぶやいた。


「おやすみなさい」

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