みた

 

 その男を見たのは何度か図書の怪物ライブラリアスとの戦いを行い慣れてきたなと思った時の事だった。

 図書の怪物ライブラリアスの狩りが上手くいっている時に現れると言うその男。

 この男は強い、かと言えば未知数らしい。

 何時も手下を召喚して戦っているので本体はどこまで強いのか分からないと言う。

 僕はオーソドックスな剣タイプだ。

 ただ、その剣が簡素な代わりに身体強化が少し得意だ。

 戦いの最中、その強化された目の、視界に男が映った。

 男はカップを傾けていた。

 こんな戦いの中で優雅にティータイムなんて! と思うと目に力が入り男の姿が拡大される。

 ふと、頭に過ったのは僕のバイト先に来るスーツ姿の女性。

 えっ! と目を開くと仮面の奥の目と視線が合った気がした。

 男は横に浮いた本を手に取るとなぞり始めた。

 いけない、また何か来る!

 僕は脚に力を集め戦場から一歩引く。

 こんな乱戦だ、僕は逃げて機会を伺いたい。

 さっきの直感が本当なのだとしたら、知りたい。

 あの女性が本当に仮面の男なら。

 何の為にこんな事をしているのか。

 

 僕の予想の通り、男は大物を出してひと暴れさせたら逃げの体勢に入った。

 ゆっくりと後ろを追う。

 目と脚に重点的に力を配分してパルクールの様に建物の上を駆ける。

 罠、罠、罠。

 男の向かう先は罠だらけだった。

 罠の種類はどんどんと増し、危険度も上昇する。

 最後に男が消えた路地を曲がるとそこは現実世界だった。

 最後の最後の罠が現実世界への強制帰還だった。

 

 大きく溜息を吐いて僕は現実世界にすっと溶け込んでいった。

 

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