神話を語ルは我にアリ?

初月・龍尖

はっさん

 

 ビルの上、私はそこで優雅にお茶を飲んでいる。

 下では何人もの図書の者ライブラリアンが戦っている。

 私の目的はひとつ、発散である。

 戦いが最高潮へと向かうその時、私はカップを投げ捨てるとビルから飛び降りた。

 

 落ちながら腕に巻いた神話語リミソロジストを起動させる。

 一瞬輝くと私はクロアサ・リンカから小脇に本を抱えた仮面の紳士へと変転し浮遊感を感じつつ戦場へと降りる。

 私は小脇に抱えた本を開き文字をなぞりながら呟く。

「化骨ノ戦列……、踊るといい」

 すると私の前に武器を構えた骨たちが並ぶ。

 骨たちは私が頷くと戦いに横やりを入れる為に突撃していった。

 私はその場にあった瓦礫に腰を下ろすとカップを取り出してお茶を再開した。


「クソッ! またお前かよ!」

「いっつもこっちが優勢の時にやってきやがって!」

図書の怪物ライブラリアスに味方すんなよ!!」

 

 そんな叫びを茶菓子代わりにカップを傾ける。

 私の口は仮面で隠れているがこの行為はパフォーマンスだから大丈夫。

 別に図書の怪物ライブラリアスの肩を持つ訳じゃないよ。

 どっちが勝っても面白くないから介入している訳だし。

 もっと混沌を! と思って戦いを見ているとひとりの図書の者ライブラリアンと目が合った、気がした。

 一瞬だったから気のせいかもしれないけれども多分、合った。

「ま、気にしないでいいか。さて、フィナーレだ」

 横で浮いたままの本を引き寄せ2度文字をなぞり呟く。

「狂殴・骨蛇化狼」

 戦っていた骨たちが崩れるとひとつの塊に集まり魂を得る。

 それは狼頭蛇腕骨体2頭身の怪物だった。

「ゴオウウウウアアアア!!!」

 轟音が響く。

 両腕が伸び戦士の首を締める。

 引き寄せた戦士を狼頭でかみ砕く。

 頭部を砕かれた戦士は砂の様に崩れ消える。

 同じ様に図書の怪物ライブラリアスも砕いてゆく。

 私は両陣営の半分ほどを砂に変えると本を閉じて地面を蹴った。

 

 三十六計逃げるに如かずってね。

 

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