旅の目的

シヨゥ

第1話

「たどり着いた場所こそが、その旅の目的地なんだと思う」

 バックパックに荷物を詰め込みながら兄は言う。

「目的地って初めに設定しておくもんじゃないの?」

「普通はな。でもそれじゃあつまらないだろう」

「つまらないもなにも、目的があって行くんだからさ。初めに設定するべきでしょ」

「俺の旅は普通じゃないからな。仕方がない。行った先で目的を見つけるのが目的だからな」

「目的を見つけるのが目的ね」

「自分探しの旅なんてそんなもんだろ。生きる目的を探すのが目的だ。そんな目的が落ちている場所なんて検討つけられるわけがない。だからたどり着いた場所こそが、その旅の、その日の目的地なんだと思う」

「なるほどな。だからあっちへフラフラ、こっちへフラフラと行くわけなんだね」

「そういうこと」

 兄はバックパックを担ぎ上げた。

「旅行記の更新楽しみにしているよ」

「任せとけ」

 昨年自分探しの旅に出た兄が帰ったのが3か月ほど前。宿泊費のかからない実家で旅の資金を稼ぐために帰ってきたのだ。そして今日また旅立っていく。

「次はいつ頃戻ってくるの?」

「年末までには」

「そっか。それじゃあ頑張って」

「応! 行ってくる」

 自分を見つけるのはいつのことになるのだろうか。それは神のみぞ知るといったところだろうか。せめて五体満足で戻ってくることを祈っておこう。

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旅の目的 シヨゥ @Shiyoxu

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