勇気の笑顔

久石あまね

第1話 はじまり

 「勇気っ!起きや〜」

 えっもう朝?母が一階のリビングルームから呼んでいる。

 

 もう起きないといけない。

 

 田中勇気は布団をはらい、起き上がった。熱したフライパンのジュウジュウいう声が聞こえてくる。母が目玉焼きでも焼いているのだろう。


 自室を出て階段をのっそりと降りた。

 リビングルームには母と妹の聖奈がいた。

 「おはよー」勇気はのんきな声で言った。

 妹の聖奈はテレビを観ながらこちらを見ずに「おはよう」と言った。

 母が「早く食べてしまいなさい。あんた今日、入学式やろ?」

 「あっ、そうやった!今日、入学式や!」

 勇気は急いで、テーブルの上にある、ハムトーストと目玉焼きを食べた。目玉焼きにはしょうゆをかけた。ちなみに聖奈は目玉焼きには塩コショウ派だ。


 勇気は鏡の前で制服に着替えた。自分の裸を見てため息をついた。なぜならお腹がポッコリと出ていたからだ。このお腹はよく友達にからかわれる。おまけに背も低い。中学三年間でお腹はへこまなくてもいいが、せめて身長は伸びてくれと思った。


 勇気は行ってきますと言い、家を出ていった。

 すると聖奈が追いかけてきた。

 「お兄ちゃんカバンっ」

 あ、カバンを忘れていた。危ない危ない。

 「ありがとうな、聖奈」

 「もうなにやってんお兄ちゃん」

 聖奈が頬を膨らませていた。

 「じゃあ今度こそ行ってきます」

 「いってらっしゃい」

 聖奈が目を合わせず、体の後ろで手を組みながら言った。


 この物語は田中勇気がすばらしい人物との出会いで人生を謳歌する物語だ。


 勇気のすばらしい人生が今、始まった。

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