いちよんまる

綿引つぐみ

記念日

 あわせて七十歳の記念日、古い運河に架かる橋をゆくと少年が川面を覗いている。

「気持ちいいっていってる。もう死ぬのは怖くないって。」

 見ると砂利場で鮭が産卵をしている。少年は駆け出すと向こう岸の母親に抱きついた。

 わたしは怖いまま死ぬかしら。妻が云った。渡るに数歩、小さな橋だった。

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