悲しい誕生日
ジイちゃんは余り話さない人だったけど、優しい目でいつも俺を見守ってくれた。
そんなジイちゃんを俺は死なせてしまったのかもしれない。
悲しみや自分への恐怖で涙が溢れてきた。
俺は死神じゃないよな?
これはただの偶然であってくれ。
その日の夕方、亜香里の顔を見て思いっきり泣いてしまった。
亜香里にはこの事は話せない。
亜香里と離れたくない。
でも、大切な亜香里が俺のそばに居て大丈夫なんだろうか?
亜香里にもしもの事があったら俺は・・・
一体どうしたらいいのだろうか?
その夜俺は様々な事を考えて眠れなかった。
翌日、ジイちゃんの葬儀が行われる。
そしてこの日は俺の誕生日でもある。
もちろんジイちゃんの葬儀の方が優先されるから、俺の誕生日の事なんか全く気にとめられなかった。
いろいろな意味で悲しい誕生日だ。
ジイちゃんの骨を見た時、人の死というモノを直ぐそばに感じて怖かった。
人はいつかは死に無に帰る。
そんな事を初めて実感した。
葬儀も終わり、静かになって行くと俺の誕生日を誰にも祝ってもらえない事が無性に悲しかった。
今日は俺の15歳になった記念日なのに・・・
ふっと携帯を見ると亜香里から「ちょと出てこれる?」ってメッセージが届いていた。
「あぁ 大丈夫だよ。今、行くよ!」
ってメッセージを返し、俺は玄関を出る。
するとそこには亜香里が待っていた。
「ねぇ 公園まで歩かない?」
亜香里に急かされ暗くなりかけた公園へ二人で歩いた。
公園へ着くと亜香里は少し恥ずかしそうに話し始めた。
「岳、誕生日おめでとう。今日は大変な一日だったけど、これだけは今日言いたくて・・・」
昨日からの様々な思いが溢れ出して俺は涙目になってしまった。
「亜香里に祝ってもらえて嬉しいよ。」
「それで・・・ 岳から言われてたお祝いの歌を歌いたいと思います。 笑ったりしないでね!」
~~~~~~~~
Happy birthday 岳
君は一つ早く大人の階段上がっていくんだね
でも、君はいつも子供で
そんな君の事、大好きなんだよ
いつも一緒に居てね!
十年も二十年後も隣りに居て私を護ってよ!
笑って、泣いて、怒ってすれ違う時もあるかもだけど・・・
一緒だったら乗り越えられるよ
今日から一つ大人の君へ
おめでとう
ラ・ラ・ラ
Happy happy birthday 岳
~~~~~~~~
亜香里の澄んだ声は俺の心の氷を溶かしてくれた。
「ありがとう亜香里!一生の思い出にするよ。」
亜香里のニコッと微笑んだ姿が俺の宝物になった。
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