21. フォルティス家訪問 −−レイナード
クロードが馬車を降り、こちらに一礼してからフォルティス家の玄関へ進んでいく。
はぁ、自分で確認できないのがもどかしい、でも荷物を確認するだけだもんな。
俺一人が急に行っても面倒くさいことになるだけだ、本当にクロードが居てくれてよかったー
思わず馬車の座席にごろんと横になる。
夢を見た後は、全身の倦怠感が尋常じゃない、やけに腹も減るんだよなあ……。
ーーコンコン
馬車の窓をノックする音が聞こえた。
なんだ? 不審に思いながら横になったまま窓を注視する。
ーーコンコン
真っ白で華奢な手が窓ガラスをノックしている。
まさか? 近づいて外を見ると、肩で息をしながら、頬を紅潮させたミレイアが立っていた。
「ミ、ミレイア」
突然のことで心臓がドクンと脈打つ、何だこの変な感覚、ゾクッとする。
驚いていることを悟られないよう、鼻だけで思い切り息を吸い込んでいると、慌てて降りてきた従者が馬車の扉を開けた。
目の前にミレイアが立っている、会いたくなかったってのに……。
「ごきげんようレイナードおにいさま、馬車が見えたので走ってきましたの」
「あぁ……」
まさか来ると思っていなかったので、うまく言葉が出てこない。
とりあえず従者には前に戻るように伝えたが、えっと俺はどうすればいいんだ。
降りるべきか、いや、乗せるべきか、いや違う、あーー困った。
「おにいさま、ちょうどよかったですわ、そのままでいいのでお話を聞いてほしいの」
ミレイアはまだ少しだけ肩で息をしていた。
大きく開いたドレスから見える白い胸元が、ピンクに染まっている。
「あ、うん、どうしたんだい?」
「実はぁ……」と言いながら、体をグイっと馬車の中に乗り出してきた。
ミレイアを見下ろす状態になるので、こちらは目のやり場に困る。
なんだよおい、これが年下のやることか、俺は絶対見ないからな!
「あのぉ、今日のことなんですけど、ミレイアの侍女が間違って、お姉さま宛の荷物を勝手に開けてしまったの」
「……」
間違って荷物をだと?
「開けてしまった荷物の中におにいさまからの物もあって、ミレイア、勝手にお姉さまへの贈り物を見てしまったことをお詫びしたくて……」
「でもそれは、侍女が間違えてしまったんだろ?」
「そうなの、でもぉ」
「それは仕方ないよ、ミレイアが気にすることじゃない」
「ほんと? おにいさまっ」
ミレイアはさらに身を乗り出して、今にも体に触れそうな状態まで近寄ってきた。
サッと身を引いて、馬車の座席に座りなおすふりをする。
それに合わせるように、ミレイアは一歩下がり、深くお辞儀をした。
「許していただいてありがとうございます」
「いや君は悪くないから、顔を上げてくれ」
ゆっくりとこちらを見たミレイアは、輝くような笑顔だった。
多分普通の男ならこの顔に騙されるのだろう、俺はただ怖いだけだ。
「どうしようかと思ってたので、直接会えてよかったです。また遊びに来てくださいませね、おにいさま」
馬車を離れたミレイアは再度お辞儀をし、周りを少し気にしながら屋敷へ戻っていった。
あーびっくりした、来ると思わなかったから対応に慌ててしまった、くそー驚かすなよ。
勝手に侍女が荷物を開けていたとは、どういうことだ。
そしてなぜわざわざ言いに来た?
狡猾で抜け目がないからきっと先手を打ってきたのだろう。
これは何かあったに違いない、ステラが何か知っているのだろうか、あーーー気になる。
ーー コンコン
「ひっ」
「何が『ひっ』だ、無事届けてきたぞ」
クロードが不思議そうな顔をしながら、馬車に乗り込んできた。
思わず抱きつくと、屋敷に戻るまで
間にミレイアやステラの話を挟みながら、ずっと説教された。
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