第4話 呼び出し怖い

 それは六月の半ば。

 学校生活にも慣れ、クラスにも慣れ、それなりに友達もできて。

 和也君は相変わらず「王子様」扱いで、ファンクラブもでき、告白や牽制し合う女子の対応に苛立ち、非常に毎日が大変そうだったが。

 私は部活も楽しくて、和也君とも部活以外でも普通に話すようになって、なんか「友達以上恋人未満みたい!」と実に充実していた。


 ある日、クラスの派手系の女の子に「相田さん、ちょっと相談に乗ってくれる?」と言われて、放課後にノコノコと着いていった私は、女子生徒の群れに囲まれてしまう。

 校舎裏へのお呼び出しって、本当にあるのだ。

 上級生から同級生まで、合わせて30人ぐらいいる。怖い。


「なんで呼び出されたか、わかる?」


 先輩らしき女生徒ににらまれたけど、素直に「わかりません」と答える。

 たったそれだけのことで、ザワッと空気が波打つのがわかった。


「あんた、王子と付き合ってるの?」


 は? である。

 和也君と付き合うって、そんなバカな。

 私は自分を弁えてるぞ?


「部活が同じだから、話すけど。普通に友人です」


 正直に答えたら、ドンッと肩を突き飛ばされて、びっくりした。

 よろめいただけだったけど、運が悪かったらひっくり返っている。


「暴力は犯罪ですよ」

「あんた、私たちのことをバカにしてるでしょ!」


 ワァワァと叫ぶように攻め立てられ、抜け駆け禁止がどうのと勝手なことを言い出されて、やっと私は王子様ファンクラブの面々だと理解した。

 わぁ、やだ。気持ち悪い。本当に漫画みたい。


 自分勝手な決め事を作って他人にまで押し付けるって、和也君が怒るのも当然だ。

 あきれつつも、集団に喚かれると威圧感があるので、ジリジリ詰め寄られて後ろに下がる。

 相談があると私を連れてきた子は、後ろの方でざまぁみろと言いたげな顔をしていた。


 どうやって逃げよう? と頭を働かせるけど30人もいると、流石に逃げ出す隙はない。

 と、その時である。

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