〖短編〗性交しないと出られない部屋

YURitoIKA

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17回目

 付き合いはじめて1日目。

 わたし達の恋慕を邪魔するのは、

 人間でも世間でもなく、


〝性交しないと部屋から出られません!〟


 ありきたりでとびきりな、最悪最低の一言と一室だったのだ。


    ◆


 ───あぁ、すごい。

 直球すぎる。てかどっかで見たことあるような謳い文句。〝本当にこんなことあるんだ〟って展開は人生の中でも沢山あったような気がするけど、コイツはその中でもとびきりだ。


 辺り一面真っ白シロ助。広さは六畳くらい。窓は無し。換気扇と机と椅子が二つ。なによりも主張が激しいのはピンク色のベッド。比喩ではなく、本当にピンク色の毛布とベッドなのだ。趣味が悪い。


 もはや少し豪華な牢獄だ。これで黒い球体が部屋の真ん中に置いてあろうものなら、〝いってくだちい〟なんて言いかねない。


 部屋の隅にある鉄製の重く固そうな扉は、お約束、と言わんばかりに施錠されている。扉の上に、ムカつくくらいチープなメモ用紙に【性交しないと部屋から出られません!】の一言。


 状況整理。

 部屋にはわたし含めて二人。ここに来た記憶は曖昧⋯⋯というより全く覚えてないのだが、知埜しや のぞむという、可愛らしさの欠片も無い自分の名前は覚えている。ついでに、隣で考える人のポーズのまま固まってから早30分強の彼───和都わと そらの名前も覚えている。


 高校二年生であるわたし達は、記憶の限りでは昨日、付き合い始めた。新年明けて数日、といった時期で若干、青春列車に乗り遅れた感は否めないのだが、幸せならそれでチャラ。


 受験前に疲れ果てるくらいイチャラブしよう!───を今年の抱負として、早速今日からデートに出掛けてみれば、気づけばこの部屋に。

 残る最後の記憶は、家具用品広場のベッドで、二人仲良く寝っ転がっていたところまで。⋯⋯あれ、そうなるとこの部屋の黒幕は図々しくベッドに寝転がったわたし達を罰しようとした店員となるのだろうか。まさか。


『カメラは見当たらないね』


 数十分ぶりに口を開く彼。驚きつつも、クールに『そうだね』と流す。


『もし⋯⋯その、なんだ。破廉恥なことをさせようってんなら、カメラとかで確認するものだと思うけど』

『だから、じゃないかな。本命であるわたし達、それを収めるカメラ本体がわたし達に壊されてしまったら意味が無くなってしまう。だから、本当に見つけられない場所にあるって可能性が高いよ』

『なるほど。⋯⋯なんていうか、俺達すごい真剣に考察してるね。犯人からしてみればもっとドキドキしてほしいのかもだけど』

『まぁ付き合って初日だし。こんなものでしょ。犯人さんは相手が悪かったってわけ。ざまーだね』

『頼もしいなぁ。俺はびびりだから、内心どきどきというよりびくびくだけど。どうして、どうやって犯人は俺たちをって』

『今考えても仕方がないよ。現状打開。石橋玉砕。まずはこの部屋を出ることを考えましょう』

『え!? じゃあ、やるの?』

『バ─────』


 なんかとってもバカみたいなことを抜かすバカがいるので、とりあえずタイキック。


『◀┗┗⇆▧,⇒◀,◢,,“』

『感想くらい日本語にしなよ』

『無理がある痛さだったよまじで。ってことは、しないんだね』

『あったり前でしょう!まだ付き合って一日目だから。早すぎるって』

『? ということは、いつかは?』


 よかった柔道習ってて。背負い投げがこんなにも簡単にできるのだから。ベッドに受け身をとれるようにしてあげただけ、わたしもまだまだ可愛い女の子なのでした。


『真剣に考えよ。まず、わたしも空君も、持ち物は全部取られてるのよね?』

『⋯⋯うん。ポケットも全部調べたよ』

『じゃあ、使えそうなものはこの椅子と机か。こっちもさっき確認したけど、ベッドは動かせない、と』

『がっちり固定されてる』

『時間制限とかは?』

『タイマーも見当たらないね。腕時計もスマホも取られちゃってるし、窓も無いから今の時間は分からないな。腹時計的には夜の七時くらい』

『うーん⋯⋯。時間の猶予はあると信じて、ここは冷静に考えましょ。


 わたし達が今すべき事は─────』


◆物語選択-Forking;Trigger-◆


①⇒〖なにもせずに一晩明かす〗

②⇒〖部屋を破壊する〗

③⇒〖絶対にできない状況にする〗

④⇒〖フリをしてみる〗

⑤⇒〖もう実際にやってしまおう〗

───────────────

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