第2話 ロボット、異世界へ逝く

「……」


太陽だ。

暑い。

本物なのだろうか?


「ん?」


風だ。

涼しい。

だが、おかしい。

今月は秋だったような気がするが。

だめだ、頭が働かない。

寝起きはどうもダメだな。

起きなければ。


「ング~!はぁ……森なんてあったか?」


森?

緑だ。緑が目の前一杯にある。

鳥の鳴き声。

川のせせらぎ。

風になびく木の葉。

テラフォーミングしたどっかの惑星か?

いや、テラフォーミングはまだできていない。

おかしい、ならここはどこだ?

コロニーではない。

テラフォーミングした惑星でもない。

地球……


「……こんなに美しかったのか。地球は」


川の音が聞こえるほうに歩く。

歩きにくい……自然の摂理によって生成された森とはこんなに歩きにくいんだな。

しかし、自然の厳しさを教えてくれる物の一つでもある。

露出している地面からは草が生え、必死に生き残ろうとしている。

これを破壊したのが人類か。

そう思うと若い頃を思い出す。

本当に、苦しかった。


「破壊……そして、創造……」


それは一つとして合わさり、人としての立場を証明する物の一つだ。

そして、言い訳の一つでもある。


「結局はやり過ぎの問題だったのかもな」


そう独り言を呟いたら川にたどり着いた。

川の水を飲んでいる野性動物を初めて見た。

感動した。

その野性動物は逃げていったが、追いかけはしなかった。

岩に座り、過去を思い出す。

実験が失敗したのだろうか?

失敗して、この体になったのなら。なぜ病院で起きなかったのか?

ロボットになった。実験は失敗した。

それだけで終われば理解は出来る。

しかし、私はなぜ女性型の素体を与えられたのか?

なぜ、森で起きたのか。

それが理解できない。


「いや、考えるのはあとにしよう。今はバッテリーが必要だ」


そう、バッテリーが必要なのだ。

まだ今は満タンだが、この先どうなるのかわからない。

まずは発電設備とバッテリーの給電ケーブル。あとは家が必要か。

川から人類が始まったように、川には自然のエネルギーで満ちている。

発電システムは川の流れを利用した物が良いだろう。それならあまり汚す事は無い。

つまり、作るのはマイクロ水力発電システムだな。

では、まず小型の水車を作り。

置いて。完成です。

……いや、本番はこれからですよ?

水車はそこら辺の石にあるアルミニウムと鉄を少々使用し、外部からの衝撃で倒木した木から水を受ける羽板を作成。回転さえすればいいのでこれで完成だ。

まあ、後々改良していくので今回はこれで終了。

次に電力に変換するのと給電するのを作るか。

電力変換器は……



ー26時間後ー



完成した……やってしまった。

川には発電施設を作り、そこから地面を通ってログハウスに。

ログハウスの地下に食料生産施設。兵器工場。倉庫を作成。

また、全力稼働に耐えられるように発電施設は3個。

……言い訳をさせてくれ。

近くに鉱山があったんです。

それでここまでできたんです。

つまり私が悪いですねハイ。


「……やってしまったものはしかたない」


そしてログハウスに入って3日目を過ごす事にした。



ー4日後ー



リスに似た動物に餌をあげて餌付けしていた時だった。

リスがなにかを察知したのか逃げ出した。

そして、少し遅れて4人の人が現れた。

革防具の目立つ剣を持った男。その人に肩を貸しながら向かってくる大盾をもった男。

杖を腰に装備した女。その女に背負ってもらっているローブの女。


「た、助けてくれ!メイが死にそうなんだ!」


その言葉を聞いて思った。


(誰?)


っと。

いや、まあ。うん。助けよう。

多分ローブの女かな?

なら、とりあえず寝かせられる安全な場所を作るか。

そう思い、一度家に戻る。

すると扉を叩く音がした。


「助けてくれ!!頼む!!」


イラつきながらも清潔なシートを持って扉を開けた。

棒立ちしている大男をどかしてシートを敷き、女を寝かせる。

いや、この身長なら女の子だな。

とりあえず服を剥いでいく。

脱がせる所は脱がすが、出血が酷い。今はスピードが必要だろう。

すべて脱がしたが、傷が酷い。胴体に斜めに浅く長い抉られた傷が四つ。足にも深く短い傷が一つ。頭にちょっとした切り傷が一つ。

まずは胴体からだ。

医療キットから構成材を取り出し、傷に液体を貯める。

そして固定板で空気に触れないようにして密閉する。

次に足だ。

骨まで抉られているこの傷が一番酷いだろう。

しかし、こんな時でも構成材。

これを傷口に貯めて固定バンドで固定すれば血液により大体10分で筋肉が完成。神経も構成できる万能薬である。

さて、頭に薬を塗った包帯を巻き付けたら次に血液の補給です。

普通ならこっちを先にするべきなんだけど、血液は医療キットには無いのよ。

まずO型の血液が無い。

もうここで手詰まりである。

さて、とりあえずまずはこの女の子から採血だ。

O型。

おお、運が良いね?

では、複製機でその血液を増やし。まずは一つ目の血液パックで輸血を開始。

複製機では酸素をヘモグロビンに含ませる事は出来なかったので、静脈から輸血開始。

とりあえず、それで様子を見る。

その間に手当てをしていく。

大男の傷が三人の中で一番酷かった。骨折だ。

疲労骨折で、まあそこまで酷くはない。全治3ヶ月だろう。

とりあえずテントやその他もろもろをあげて女の子の様子を見る。

名前はメイというらしい。


「メイは、大丈夫なんですか?」


まあ、どうなるかは知らないけど。命に別状は無いし。死にはしないので肯定として首を縦に振っといた。

まあ、その後はメイさんの治療が終わり。皮膚を張り付けて終了。

輸血はまだまだだけど。まあ、山は越えた。


「この借りは必ず返します!欲しい物があったらなんでも言ってください。俺達、王都では名の知れた冒険者ですから」


冒険者?

なんか聞いたことがあるな。

とりあえずテント張るのを手伝って料理を作っているとメイさんが起きた。

そして、泣き出した。

慌てふためく三人を冷たい目で見て、メイさんの所に行き、背中を擦る。

こんな大ケガをしたのだ。怖かったに違いない。

泣き止んだので暖かい焚き火に当たらせて別の料理を作る。

体が弱っているのでお粥だ。

栄養豊富なお粥を別に作り、メイさんに渡す。

また泣きそうになりながら食べるので二杯目にちょっとしたイタズラを仕掛けた。

辛い木の実を混ぜたのである。

食用なので大丈夫なはずだ。


「辛い!?」


水をガブガブ飲むのを笑って見ていたら革鎧の人にくれとせがまれたので渡すことに。


「お、うまい!」


「そうなのか?」


「ああ、結構辛いけど。しっかりとまろやかな旨味が広がっていく!」


「おいしそうね。私にも一杯くれませんか?」


「俺にも頼む!」


そしてまあ、皆辛い辛いと言いながら食べて体を暖めた後。夜になり皆寝始めた。

それを確認した自分は夜警をする事にして準備をしていた。

……本当に油断した。


「……ここは?」


そんな声が上から聞こえたのだ。

この声はメイさんの声だな。

まあ、見られても問題は無いが。危ないので追い出すとしよう。

階段を上ってメイさんを見る。

彼女もこちらを見た。


「あ、ごめんなさい。突然入ってしまい、本当にごめんなさい」


まあ、扉に鍵をしてなかったこっちも悪いのだからイーブンだ。

とりあえず彼女をリビングに座らせてココアを出す。

ココア……ぽい物だ。

うん。ココアっぽい。

それを出して自分も飲み始める。

甘い味にココアの風味が広がり、リラックスする。

メイさんも飲み始めた。

森の声は聞こえない。

代わりにココアを飲む音だけが室内に響く。

寂しいので音楽でも流そうか。

夜の定番曲はJAZZで決まり。

美しくも不規則な優しい音色が響き渡り、夜の景色も相まって暖かい感じがした。

それに釣られてか、三人も起きてココアを飲み始めた。

そして、雑談を始めた。

そうして夜は過ぎ、朝が来た。

漏れ日が美しく射すのを窓で見ていた。

四人は帰っていった。


「また来てもいいですか?」


そうメイさんが言い、肯定して笑顔で帰っていったのを思い出して笑う。

外に出た。

リスやその他の動物が集まり始め、賑やかになり始めた。

そして、時間が過ぎて皆が離れ始め。リスに似た動物に餌付けしているとまた何かを察知したのか逃げ始めた。

そして、三人の子供が来たのであった。

女の子だけの三人組を見て私は思った。


(またですか)


っと。

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剣と魔法の世界にロボットが来たらしい ~そのロボットは人である~ デルタイオン @min-0042

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