少し辛いぐらいがいい
シヨゥ
第1話
「将来が不安ならとりあえず動いてみるべきだと思うよ」
相談をすると親戚の姉さんはそう返してきた。
「でも怖いよ」
「怖いからこそだよ。動いていれば気が紛れて不安が和らぐんだから」
「でも何をしたらいいのか……」
「少しだけ背伸びをしたらいいの」
「背伸び?」
「そう背伸び。背伸びをするのって少し辛いでしょ?」
「うん」
「その少し辛いぐらいがいいの」
「辛いのが良いの? それって変態じゃない?」
その問いかけに返ってきたのは咳払いだった。
「少し辛いぐらいだったら続けられるでしょ?」
「そうだね」
「まずは少し辛いぐらいの負担で今を変えられる些細なことから取り組んでいくの。そして辛くなくなったら次の少し辛いことを始めるの。そうやって繰り返していくことでいつの間にか大きく変わっていることに気づけるはずだよ」
「そう、なのかな?」
「そういうもんなんだよ。いきなり変わろうとしてかなり辛いことをやったら、結局諦めて元に戻っちゃう。それじゃあダメなんだよ。だから少しずつ、ゆっくりと変わっていく。そうしたら今不安に思っているこの場所から、遠く離れた場所で、不安なく将来を見ることができると思うよ」
諭すようにゆっくりと語りかけてくれて、なんだかそれが信頼できる言葉のような気がしてきた。
「信じて頑張ってみるよ」
「うん、頑張れ。もしまた不安になったら話に来て」
「いいの?」
「うん。だって、人と話すことで不安のほとんどは解消するんだから」
気づけば不安でざわついていた心が落ち着いている。
「分かった。ありがとう」
「どういたしまして」
やはり年長者に質問してみて正解だった。持っていなかった答えをこうして持ち帰ることができた。分からないことを訊く。これもまた姉さんの言う背伸びのひとつなんだと思う。
少し辛いぐらいがいい シヨゥ @Shiyoxu
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