手のひら王子とハニカミ皇子
香鳥
はじまりはいつも蝉
第1話 王子と皇子
なぜ、どうして・・・。
一体俺はどうなってしまったんだ?
こんな現実はあり得ない、あるわけがない。
夢だ、そうだ悪い夢だ。
助けて・・・誰か助けてくれ。
なぜ俺はこいつを。
柚木とはさっきまで鼻を突き合わせて言い争っていたばっかじゃん。
いつもすかした顔して秀才ぶってる
親がPTAのお偉いさんで、女子からは「
鉄面皮を崩したことのないこいつが今、驚きの表情で俺を見下ろしている。
見下ろすって、俺もこいつも
どーしてこいつ、こんなにデカいんだよ。
足元から見上げている俺を、見たこともないような真ん丸い・・・綺麗な目でみていた柚木だが。
その場にゆっくりとしゃがみこむと
俺を ──────。
7月の蒸し暑い2階の校舎。
さほど新しくもない教室。
遡ること30分前、放課後の教室で俺と柚木は言い争っていた。
「うるせぇな、何で柚木に文句言われなくちゃいけないんだよ。関係ねぇだろ」
「あるから言ってる。執行部から月例委員会の予定は事前に渡してある。それすら守れない風紀委員がどこにいる。そんな奴が同じクラスなんて俺の立場はどうなる」
「貴様の立場なんて知るか!カタブツ執行委員が偉そうに説教か?」
「当然のことを言ってる。おまえのせいで何人が迷惑したと思ってる」
「知るか!こっちの話には聞く耳持たずかよ。一体何様だ。偉そうに俺をおまえとか言うな!」
俺は
この春のクラス替えでこの人を見下した目で説教を垂れている柚木と同じクラスになった。
やり手のなかった風紀委員に悪友達に持ち上げられてノリで引き受けた。
馬鹿じゃあるまいし委員会くらい覚えていたが、俺には行けない理由もあった。
が、こいつには一生言うもんか。
「話だと?まともな理由があるとは思えないな。どうせくだらないことだろう」
「本気でムカつくな!あぁあ、貴様に話してやる義理なんかこれっぽっちもねぇわ!」
こうなると売り言葉に買い言葉だ。
いつもならまとわりついてくる女の子たちも息を潜めて遠巻きにみている。
ごめんな、俺こういうキャラじゃないのに。
柚木は言いたいことを言い捨てると踵を返して教室を出て行った。
「新ぁ、言えばよかったじゃん!用務のおじさんの手伝いをしてコピー用紙運んでいたって」
「そうよー、勝手なこと言っちゃってさぁ。私らも悔しいよ
女の子たちは声を掛けてくるが、俺はいつまでたっても腹の虫がおさまらなかった。
珍しく不機嫌が直らない俺に、女の子たちは顔を見あわせて、ひっそりといなくなった。
教室には俺、ひとりきりになった。
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