お尻はキレイに

落光ふたつ

お尻はキレイに

 ——ブリブリブリブリィッ‼


 ……我ながらに恐ろしいものが放出された。

 平日の真昼間。

 昼食中に襲い掛かって来た腹痛によって、逃げるようにやって来た公園の公衆便所。

 その中の、男子専用区画の二つある内の奥側の個室にて。


「……うぐぐぐっ」


 俺は、今年一番の強敵に立ち向かっていた。

 開戦の合図は敵側からの砲撃。それでも未だ状況に変化はなく、戦場を外側から抑え込んで応戦する。

 これは長期戦になるぞと覚悟して、次弾を備えた——その時だった。


 ——コンコン。


 人の気配に発砲直前の穴がキュッと閉じられる。


「……入ってます」


 今は戦の真っただ中。そんな状態でこの座を譲るわけにはいかないので、もちろん扉を開けることなど出来るはずもない。

 しかし、向こうも窮地なのかノックがダメならと直接交渉を仕掛けてきた。


「入ってもいい?」


 声と同時に扉がガタガタと揺れ動かされる。

 鍵を掛けていなければ間違いなく俺の痴態を目撃されていたところで、相手は既にこちらの意思など無視の様子。

 そんな強引な行為に文句を言おうとしたのだが、それ以上の疑問が浮上する。


「きみ、もしかして女の子?」

「うん」


 聞こえてきた声音から推測して問いかければ、返って来たのは肯定だった。

 それはやはりまだ幼い女声で、大まかにではあるが、小学生ぐらいのものと思われる。

 となると、また聞くべきことが増えてしまう。


 なんたってここは男子トイレだ。


 幼いとか関係なしに女性が立ち入るべき場所ではない。

 ……いや、むしろ幼いから、か?

 不可思議を解消する仮説が浮かんだので、それを確かめることにした。


「ここ、男子トイレだけどもしかして間違えたのかな?」

「ううん」

「それなら、女子トイレの方が一杯だったんだね?」

「入ってないから知らない」

「そ、それじゃあ故障か、掃除中だったとか……?」

「だから入ってないから知らない」


 問答は全て否定。謎は余計深まるばかり。

 幼女を意識して心掛けた柔らかな口調も、予想外の連続に罅が入ったようにぎこちなくなっていく。


 ……一体、どういうことだ? なぜに男子トイレに幼女がやってくる?


 すっかり腹痛も忘れ、目の前に現れたミステリーに疑問符が大量発生。これがイナゴなら東京ドームに敷き詰められた稲も全滅だろう。たぶんすごい。

 そうして頭を悩ませている間も、少女はずっと施錠された扉を開けようと頑張っている。

 懸命な姿勢は褒められるべきだが、しかしその努力が実を結んでしまえばそれは公共施設の破壊になるし、公然わいせつ罪もついてくるため、出来るなら諦めて欲しい。


 ……いや、幼女なら罪にはならないのか?


 その思考の意味のなさに気づけないということは、かなり冷静さを欠いていたのだろう。

 そんな俺を現実へと引き戻したのは不屈の幼女の声。


「ねえ。入っちゃダメ? ねえ」


 BGMにはガタガタガコガコという扉への破壊作業音。

 本当にいつか扉を壊され突入されてしまうんではないだろうか、と一抹の不安が襲う。

 そもそもなぜ、この個室なのだ? 隣ではダメなのか?

 この男子トイレ内に個室はもう一つある。俺が入ってきてからお隣さんが入居した覚えはないので、そちらならいつでも入れるはずなのだ。

 それなのに、彼女は俺のいる個室に固執している。

 どうやらこちらの方にだけ用があるらしい。確かに俺が用を足しているので用はあるよなー。そう言うことではない。

 このままではらちが明かないので、俺はストレートに尋ねることにした。


「何で入りたいのかな?」

「言ったら盗られるかもだから言わない」


 言ったら、盗られる……?


 妙な返答に俺は思わず眉をしかめる。

 言葉のまま察するなら、この個室内に何らかの形あるものが存在しているということだろう。

 そしてそれは、存在を知っただけで盗られると危惧するようなもの……

 辺りを見渡してみて真っ先に視界に入ったのは、足下に転がっているトイレットペーパーの芯だった。

 ……なるほど。


「ここに落ちてるトイレットペーパーの芯が欲しいんだな?」


 芯を拾い上げ、核心を持って問いかける。

 当然俺にとってこれはゴミだが、子供ならそうとも限らないはずだ。

 幼少期の価値観と言うのは大人になって振り返ってみれば鼻で笑ってしまうような偏りがある。

 それに、トイレットペーパーの芯はオモチャには最適だ。ありふれているし、切り貼りすれば思いのままの物を作れる。ならば、集める子供がいてもおかしくはない。

 つまりは、彼女にとっては宝物と言って差し支えないのだ。


 ……完璧な推理か? 


 そう自己陶酔しながら、扉の下に空いた隙間から少女の下に芯を転がしてやった——のだが、


「違う。いらない」


 ——ぺこっ。

 頭頂部へカムバック。

 共通認識でゴミと認定されたトイレットペーパーの芯は、気の抜ける音を立てながら、俺の頭髪で衝撃をやわらげ足元へと跳ねる。

 トイレの床を転がっていた物体が髪に触れた不快感で顔をしかめてしまうが、すぐさま頭を洗える状況でもないので仕方なしに呑み込む。ごくん。

 しかし俺の推理は全くの見当外れだったらしい。今時はもう、オモチャを自作するような時代ではないのだろうか。


 さて、ならば他には何があるか。

 意識を切り替えた俺は再度個室内を見渡した。こうしてよく見てみれば割と死角があるもんだ。

 とりあえず、便器に座りながら手が伸びる範囲で探ってみる。


 ——かさり。


 すると早速、手の平が違和感を掴んだ。

 便器に併設されたタンクの裏。

 陶器のツルツルな感触から急に変わって、紙製のような少しザラザラした手触りを捉えた。


「なんか、タンクの裏にあったけど、これか?」

「たぶんそれ。盗らないでね。すぐ入るから」


 どうやらビンゴだったようだ。

 ようやく真実が見えてきて、安堵に似た達成感を味わう。

 しかしそれと同時、少女の言葉がふと気になった。


 すぐ、入るから……?


 その意味を考えようとした瞬間、ガッ! と一際大きな音が扉から聞こえ、そして、にゅっと上から伸びてくる小さな手。

 まさかのまさか、少女は上部から個室へ侵入しようとしていたのだった。


「いやいや取らないから! すぐ渡すから入ってくるのはやめようか!? お兄さんも羞恥心と言うものがあってだね!」


 アクティブな少女に思わず目を剥いて必死に言葉を並べていた。

 相手が幼いと言っても他人に脱糞中を見られる度胸は俺にはない。


 さっさとこれを渡せば、彼女も落ち着くか?


 タンク裏の『何か』。彼女はこれを欲しているのだから、これを引き渡せばわざわざ個室内に入ろうともしなくなるはずだ。

 そう判断して、俺は『何か』が今どんな状態かも確認せず、勢いよく引っ張り出した。


 ——ベリッ!


 それはテープで張り付けられでもしていたのか、そんな音と共に俺の右手へと重みを乗せる。

 そして、ほんのわずかな好奇心がチラリと視線を手のひらへ動かし、


 ——俺は、固まった。


「ねえ何してるの? やっぱり盗っちゃうの?」


 声に反応し、改めて少女の方を見る。扉で隔ててその姿は見えない。

 どうやら俺の言葉を聞いて進撃もやめてくれたらしく、扉の上の小さな手は引っ込んでいた。

 しかし、俺は少女の姿をこの目で確かめたかった。

 右手から駆け上がる不安感。それはいつまでも淡白な声で語り掛けてくる少女の下へと走り、更なる不気味さをまとっていく。


 手のひらにあるのは封筒だった。

 コンビニでも買えるような、変哲のない茶封筒。

 どうやらタンクにはガムテープで張り付けられていたらしく、その切れ端がベロンと垂れている。

 そして、乱雑な剥がし方をしたせいで、封筒の一部が破け、中身が見えていた。

 その中身が、俺の体を硬直させたのだ。

 封筒の切れ目から覗くのは人の顔——が印刷された紙きれ。


 つまりはお札——一万円紙幣だった。


 しかも見えているのは表面だけ。握る封筒の厚みから考えると、百枚は軽く重ねてありそうで。

 確かにこれなら、存在だけで盗まれる対象になる。

 そう冷静に少女の言葉を振り返りながらも、俺の両の目は頑なに右手から離れない。

 右手が、実態以上の重みを感じて、その重圧に動けなくなっている。


「こ、これ、本当にきみの?」

「うん」


 返ってきた肯定は、ずっと変わらない少女の声。

 けれど顔が見えていないのだから、扉の向こうにいるのが本当に幼女なのかどうかも疑わしく思えてくる。


「えっと、お金が、封筒に入ってたんだけど……」

「あ、中身見ちゃったんだ」


 隠匿していた事実が明らかになったと言うのに平坦な相槌。

 そして更には、全てを諦めたように彼女は言い放った。


「そっか。それなら盗っちゃうよね。じゃあ私は帰るね」


 あまりにもあっさりとしていて、何の心残りもなく踵を返す。

 さっきまでの行動が嘘のような執着のなさだった。

 少女の気配が遠ざかろうとする。彼女にとっては、このお金も見つかってしまえばその程度のものだったのだろうか。


「待って!」


 俺は思わず呼び止めていた。

 何で呼び止めたのかは自分でもよく分からない。

 真実を最後まで知りたかったのか。少女ともう少し話したかったのか。

 どちらとも理由に成る気はして、でもそれ以上の何かが口を開かせていた。


「なに?」

「あーその……、なんで、この男子トイレにお金があったんだ?」

「私が隠したから」


 絞り出した質問に対して答えは酷く端的で、見ようとした全てが見えてくれない。

 けれどなんとなく、そのやり取りでようやく少女の性質のようなものは見えてきて。

 俺は丁寧に、一つ一つ聞いていくことにした。


「何で、男子トイレを選んだ?」

「女の子は普通入らないから。それに、濡れないから」


 理由は二つ。前者の理由はまだ納得できたが、後者の方は意味不明だった。


「どういうこと?」


 少女は聞かれるがままに答えるから、だから俺は、身構えも出来ずに聞いてしまう。

 後で思ったことだけれど、やはり幼少期は価値観の偏りが大きいのだ。


「みんなが言ってたの。濡れたくないなら男子トイレに行けって。それで行ったら、女の子が行くとかあり得ないって。それ聞いて、隠すのにはちょうどいいかなって思った」


 淡々と告げられた内容だからと当たり前のように受け入れかけて、しかし脳内が不意に思いとどまらせる。

 言葉の意味を捉えて、浮かび上がる情景。

 それは決して当たり前にしてはいけないもので。

 けれども少女は、何を思った様子も見せない。

 それなら、俺も感情を見せてはいけないのだろうか。

 不意に湧いた同情や憤慨。それを発するのは見当外れだと思考の端にいる自分から言われたような気がして沈黙を選ぶ。

 しかし、それと同時に湧いた一つの予感から、俺は少女へと踏み込んでいた。


「……このお金は、どこから持ってきたんだ?」

「みんなから」


 何の躊躇いもなく、善悪の判断もついていない、機械じみた回答。

 それは、自分が間違っているとはまるで気づいていないから。

 まだ、彼女はちゃんと知らないのだ。

 この子は、どうしようもなく子供で。

 もしかしたら、人として大切な『正しさ』を教えてもらっていないのかもしれない。

 ならば、気づけた人間が、それを示すべきなのでは?

 とってつけたような正義感が俺を駆り立てる。


「人からお金を盗るのは、良くないことじゃないかな?」


 自身で気づいてもらおうと問いかける。しかし少女は不思議そうに返した。


「でも、犯罪者には何をしても良いんだって、みんなが言ってたよ?」

「犯、罪者……?」

「みんな、私のことを犯罪者だからって言って、物を盗ったり壊したりするの。でも、人の物をそんな風にするのは、犯罪だよ? なら、みんなにも何をしたっていいんでしょ?」


 純真無垢な問いはあまりにも歪んでいて、俺はまた、口をつぐんでしまう。

 けれど少女は構わず、更なる闇を披露した。


「あと、お父さんはちゃんと一回捕まってる人だから。そのせいで私も犯罪者とか言われるし、それによくぶってくる。だから私がお金を盗ったって、それは正しいことなんだよね?」

「……違う」


 反射的にそう応えていたけれど、彼女の言い分を否定する材料なんて持っていない。

 それでも、彼女には伝えないといけなかった。

 それが、俺に科された義務なのだと、自分勝手に思い込んでいた。


「きみは、とても良い子だよ」


 周りからの言うことをよく聞いて、自分で物事を考えて行動も出来る。感情的にならず淡々と目的に向かう様は、誰もが持てる性質ではない。


「でも、きみは間違っているんだ」


 どれだけ良い子であっても、環境がねじ曲がっていればまっすぐに育つなんて無理だ。

 そもそものルールが誤っているんだから。そこから何をくみ取ろうとしたって、正解にはたどり着けない。

 別に顔も知らない他人のこと。

 そう割り切ってしまっても良かったはずが、深く踏み込んだせいで、俺はもう他人事とは思えなくなっていた。


「きみの周りの人の方が、よっぽど間違ってはいるけれど、きみまでもその常識を鵜呑みにしてしまえば、どんどん歪んでしまうよ」

「? よく分からない」


 小学生程の少女には、言葉では難しかったのだろう。理解出来ないと訴えてくる。

 ならば伝え方を変えるしかない、と俺はまるっきり話題を切り替えた。


「それじゃあ、ちょっと君に頼みたいんだけど、隣の個室からトイレットペーパーを投げてくれないか? こっちのが切れちゃってるんだ」

「分かった」


 話が全く別の物へと変わったにも関わらず、少女は言われるがまま従ってくれる。その従順さに心が痛んで、その未来を憂いてしまう。

 すぐに隣の個室からトイレットペーパーが投げられてきた。それを左手でどうにかキャッチして太ももに一旦置き、俺は先ほどの封筒の中から一万円札を一枚取り出す。

 そしてそれを、少女がいるだろう位置へと滑り込ませた。


「ありがとう。これがお礼ね」

「?」


 少女の影の形が動いてお札を拾う。その行動を確認して、用意していた文句を並べる。


「お金って言うのは、こうやって何かを、仕事をして、そのお礼に貰えるものだ。決して誰かから勝手に盗っていいものじゃない」

「でも、みんなは盗るよ?」


 そう疑問を持たれるのは想定していたから、別の角度から問い直す。


「きみは、みんなのことが好きなのかな?」

「ううん」

「みんなと同じように人の物を盗れば、きみまでも『みんな』になってしまう。それともきみは、嫌いな『みんな』になりたいの?」

「なりたくない」


 ハッキリとした拒絶の意思を聞き取れて安堵する。

 これなら、正しさをちゃんと伝えられる。


「子供の内は、お金を貰えるような仕事なんてほとんどない。でも、誰かに何かをしてあげれば、何かを返してもらうのはどこでだって変わらないんだ。この世界のルールだよ。だからこそ逆に、何も上げていないのに奪うのは、とても悪いこと。ルールに逆らうことなんだよ」

「私、悪いこと、してたの?」

「今、気づけたなら、まだ立て直せるさ。きみの嫌いなみんなは、きみに嫌なことをしてくるのかもしれないけど、逆にきみが優しくしてあげたら、みんなも自分の悪さに気づいて嫌なことをやめて優しさで返してくれるはずなんだ」


 それが、世界の真理だから。それこそが『正しさ』だから。


 少女は俺の言葉を聞いて、何かを考えるように黙り込む。それから少しして、初めてにも思える感情を見せてくれた。


「……そしたら、私も一緒に遊べる? 誰も私に近づかないから、みんなみたいに遊べないの」


 いかにも子供らしい悩みが聞けて、思わず微笑む。


「遊べるさ。きみが優しければ、あっという間に友達も出来る。ちゃんと、きみのことを見てくれる人はいるはずだ」


 見えてもいないけれど、少女の顔を見つめて俺は言った。

 胸の中には、正義を成した充足感が満ちていて、少女に感じていた不気味さもすっかり消えている。

 それを実感していると、突然少女は申し出た。


「そのお金、あげる」

「え?」


 言われた意味が分からずキョトンとしたのだが、その答えは、俺の想定以上の結果が生まれた証拠であった。


「私が間違ってるって教えて『貰った』から、お礼にあげる」


 見えないのに、少女が笑ったのが分かった。

 そして、彼女の考え方が確かに変わったのだということも。


「私もみんなに色んなものあげて、色んなもの貰うね」


 そう決意を表明すると、少女の気配は去っていく。僅かに聞こえた足取りはとても軽やかで、楽しみを待つ子供のそれだった。

 正しさに気づいた女の子。

 あの子の人生はこれから明るくなっていくのだろう。

 顔も知らない少女の未来を想像して、なんだか得意げな気持ちが生まれた。


「………………はあ」


 しばらくして、一人になった俺は深く深くため息を吐く。

 説教のお礼に貰った札束の入った封筒を、なんとなしに眺めた。

 よく触ってみれば分かるが、中には紙幣だけではなく硬貨も混じっている。

 恐らく千円札とかも混同しているだろうから、封筒の中身は想像よりも少ない金額だ。

 けれどこれは紛れもない盗品。そのまま貰うわけにはいかない。

 だからと言って、これを警察に届けて万が一にでも持ち主の元に戻ってしまったら、その時は盗んだ犯人である少女の立場が悪くなってしまうだろう。

 どうしたものか、と悩んでふと思いつき、数枚のお札を引っ張り出す。


「とても贅沢だなぁ」


 俺は、札束でお尻を拭いた。

 その肌触りは固くて痛かったけれど、数万円分の価値はそれだけで妙な幸福感を与えてくれる。


 ……なんてことはないけれど。


 自分でも馬鹿なことをやっていると分かりながら、それをやめる。

 汚損紙幣と封筒をまとめてトイレに流し、価値が底なしの穴へ呑み込まれていく様を自分の股の間から見届けた。

 それからなんとなく、足下に転がっているトイレットペーパーの芯を蹴った。


「……男子トイレでも濡れるって、言っておけばよかったかな」


 自虐気味にもう遅いことを口にする。

 少女の会話でかなり時間が経ってしまった。早くトイレを出ないと昼休みも終わってしまう。

 けれども人為的に起こされた腹痛は、いつまでも便座に縛りつける。


 ……いっそのこと、このままでもいいけれど。


 そうやって逃げようとしている自分を顧みて、先ほどまで教導していた自分が本当にアホらしくなった。


「…………はあ」


 また一つため息を吐く。

 今は誰もいないから、汚れを隠す必要はない。

 なによりここはトイレだし。

 一時は忘れられていた痛みに、俺は惨めにも体を縮こめる。


 結局、人生はキレイ事を言って生きていたい。


 キレイを信じられるのは、強く清い人間だけだから。

 誰だってそうなりたいのだ。

 そんな理想はないと分かっていても。

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