転生デビュー。

「(……う、あたまがいたい)」


 ゆっくりと目を開けた。視界がぼやけて周囲の様子がほとんどわからない。けれど、嗅いだ覚えのないにおいと眩しさに思わず顔をしかめてしまう。

 そして、こみ上げる感情が抑えきれず、


盛大にを上げた。



 なぜ泣き声を上げなきゃならないのか分からず、更にこみ上げる訳の分からない感情に泣き声が酷くなる。


 感情を制御できずに泣き声をあげるなんて、。泣き叫んでいるせいか、身体が熱くなって、喉が痛くなってきた。


「あら、起きたの? ごめんね、すぐ気付かなくて」


 それからすぐに、誰かの腕に抱きかかえられた。温かくて、いい匂いだ。ひどく安心できて、落ち着く。

 感情が落ち着くとともにいつの間にか泣き声は止まり、しゃくりあげるだけになっていた。


「よーしよし、怖かったのかな?」


優しく揺すられて、とんとん、と、そっと背中を叩いてくれる。


「大丈夫よ、。母さんがいるからね」


 ――『ステラ』って、だれのこと?


 勘違いでなければ、抱きかかえてくれたこの腕の持ち主が、僕のことをそう呼んだはずだ。


 ちがう。ぼくのなまえは……あれ、なんだっけ。


 元の名前が、おもいだせない。


 それが悲しくてまた、泣きそうになる。


「よしよし、えらい子ねー」


そう、ぐずりだしたステラを『母さん』があやした。なんだかその優しさが哀しくて、でも眠たくて。ゆっくり目を閉じた。

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