第30話 休日出勤

 朝の窓辺まどべは穏やかな日差ひざしと共に、時の流れと喧騒けんそうと。

 どたどたどた。きゃっきゃっきゃっ。

 「ミス・テリーーー、お駆けっこだよぉー、さくたん来たぁーーー」

 かぴたんを連れて来る。


 足をはやめ歩く人々、隔絶かくぜつされた世界からのぞき見ている様に。

 どたどたどた。きゃっきゃっきゃっ。

 「かぴたんっ、早く行って早く行ってぇーーー」

 ミス・テリーの叫び声、平穏へいおんな空間。


 BGMはモーツァルト、トルコ行進曲。

 どたどたどた。きゃっきゃっきゃっ。

 「あーーー私もぉ~」「「「はじめちゃん来たぁーーー」」」

 コ、コーヒーは、特別にブルーマウンテン、コロンビア、サントス、モカ、キリマンジャロを独自にブレンドした物、香りも素晴らしく。


 「あー私も」「ちょっ、混ぜて下さいよぉ~」

 「Ohーーー」「皆来たっ皆来たぁーーー」「いやーーー」

 「私の妹ぉーーー」「妹達ぃーーー」「それそれぇーーー、捕まえるぞぉーーー」

 色々な味わいが、・・・良いのかなぁ~。


 どたどたどた。きゃっきゃっきゃっ。

 「「「やぁーーー」」」「私の妹ぉ~」「妹達ぃ~」「それぇ~~~」

 俺が探し求める職場がここに、ここに。

 どたどたどた。きゃっきゃっきゃっ。わいわい。

 ・・・ここに、・・・はねぇーーーーーーーーっ。


 「狭いし危ないしほこり立つし、皆で走り回らないっ」

 どたどたどた。きゃっきゃっきゃっ。わいわい。

 「「「捕まえたぁーーー」」」「「「にゃぁ~」」」

 聞いてねぇ~~~。


 「まもちゃん、明乃あけのちゃん、はじめちゃん、働いて下さい。私達娘子隊じょうしたい我慢がまんしてるのにっ」

 「一緒に追っかければ良いのにぃ~」

 「出来る訳ないでしょぉ~、準備、終わってないし、その狭い空間に更に4人が加われる訳ないでしょぉ~」


 おう、言ってやれ言ってやれ、もっと言ってやって。

 「所長っ」「おっ何、空自のくぅ~ちゃん」来たぞぉーーー。

 「違います、ソファーとテーブルのけて下さいっ、私達が入れないじゃないですかっ」


 そっち。「ここ、ほら、表向き喫茶店だから、それはちょっとぉ~」

 「それに早く呼んで下さいっ、保育士の資格とって皆待ってるんですからっ」


 「あーーー、今度は大丈夫だから、ほんと」

 ねぇ~~~、何で俺が責められるのぉ~~~、可笑しくなぁ~い。


 明乃あけのちゃんの営業活動もなかなか進まなかった。

 桜花は非公開だからね。

 富岳ふがくあるいはミニ富岳ふがくとして売り込み、桜花が仮想富岳ふがくを造り、IPも超ダミーで対応。


 取って来た案件は、さくたんとはじめちゃん、桜花自身が精査せいさした。

 結果、今回は予算で頭を抱える事無く実施できる。


 桜花が言っていたデータテーブルは、早々はやばやと出来上がったらしく、外部ジョブを意外と喜んでこなしていた。

 残る問題は、ミス・テリーとかぴたんの体調だ。


 今回の量子探偵業務は、どの程度実時間を必要とするか分からない点だ。

 そこで今日、ミス・テリーとかぴたんの学校がお休みの時に行う事にした。

 お友達を呼びたいと言っていたのだが、ご家族の突っ込んだ素行調査が間に合わなかった。

 ぶひぶひ言っていたが、わかってくれたと思う、多分。


 「うん」「うにゃ」「うんうん」「うにゃにゃ」

 「でぇ~~~明乃あけのちゃん、何時いつからはじめるの」

 明乃あけのちゃんさぁ~、ミス・テリー、っぺたすりすりされるの嫌がってない。


 「うんうんうん」「にゃにゃしゃぁーーー」ミス・テリーが限界に達した様だ。

 「ミス・テリーーー、え~へへへぇ~~~」ぱしっ。

 「ふにゃっ、ぅ~、ぅ~~、ぅ~~~」

 今度はかぴたんに捕まってすりすりされてる。エンドレスだね。


 「だっ、だめぇ」「良いではないか良いではないか」

 はじめちゃんもさくたん捕まえて触り放題だ。

 「「むむむむむ」」明乃あけのちゃんとまもちゃんは逃げられて、獲物物色中。


 こんな事は言いたくはないけどさぁ~。「皆っ、仕事しよう」

 ざざっ。なっ、何、皆して。

 「ちち、私とかぴたんは遊びに行く」「うん、ぱぱさんそうだよ」


 「あっ、あああぁぁぁ~~~」「まもちゃん、どう言う事かな」

 「忘れてましたぁ~、今日は二人共、しずかちゃん達と遊ぶ約束なんですよぉ~」


 「え~と知らないの俺だけ」「ですね」あっさり言うなよ。休日出勤なんだから。

 「あのね、俺のところも働き方改革で、もともとうるさいいのに、更にうるさいいのよ休日出勤」


 「えっ、所長、休日出勤なんですか」「そらぁ~そうでしょうよ皆も」

 「違いますよ」「あれ、だってほら仕事、量子探偵業務、するでしょう今日」

 「おっちゃん、何にも聞いてないの、まもちゃん全然言ってないの」

 「ごめん、さくたん。娘子隊じょうしたいの皆と行けるのが嬉しくて舞い上がっちゃって」


 「さくたん、どう言う事」

 「今日はミス・テリーとかぴたん、お友達とカピバランドに行くの」


 「それはだめだよ、さくたん、外敵に拉致されたらどうするの」

 「でしょう。だから皆で引率いんそつする事にしたの」「皆行くの」

 どうして皆可愛らしい服を着て、御粧おめかしをしているのか、不思議だったが。


 「そう」「・・・じゃぁ~俺は、俺の休日は」

 「マスターお留守番、よろしくです」「はぁ~、何はじめちゃん」

 「マスター、特別にコーヒーも紅茶も飲み放題にして上げます」

 「明乃あけのちゃん、そんな事で」

 「ここのお留守番なら、休日出勤付きますよ。まったりと楽しんで下さい」


 俺が欲してまない職場が、ここに在る様だ。

 「桜花の準備出来たよ」「桜花、桜花も行くの」

 陸自のりくちゃんだったかな、タブレット用のショルダーバッグを掛けて出て来た。


 「いやっ、陸自のりくちゃん、それはまずいよ、秘匿ひとくすべき最高機密なんだから桜花は」

 「え~~~いいじゃん、私だけおっちゃんと二人だけにされたら、純潔の危機だよぉ~」


 なるかっ「ん~~~、さくたんっ、はじめちゃんっ、ぜったい漏れない様に」

 「おっちゃん有難う、まぁ~かせて、桜花良かったね」「うん、お外が見たい」

 「ネットから世界中見れるでしょうよぉ~」「皆と一緒に行けなぁ~~~い」

 まぁ~~~そうね。「分かったよん。気を付けて行っといで」「うん行って来るぅ~」


 じゃぁ~何時いつするのかなぁ~。

 「明乃あけのちゃん、予定はどうよ」

 「そうですね。明日はくたくたで動けないでしょうから、明後日あさって


 「本当、そろそろ報告書を上げないと、明乃あけのちゃん所もでしょう」

 「大丈夫、私若いですから、直ぐに回復します。所長は飲み過ぎないで下さいよ。今回は全て高解像度ですから、途中中断は経費、倍になるんですから」


 「はいはい」

 「そろそろ出ないと、しずかちゃん達のところも回らないと」

 「もうそんな時間、ミス・テリー、かぴたん、さくたんも、おトイレいった」

 「いった」「うん、ぷっふん」おっ、口を塞いだ。「言うなっ」「え~~~」

 「私も大丈夫」「皆は」「「「「「OK」」」」」「問題ないわ」


 「じゃ、出かけましょう」

 「行ってきまぁーーーす」「行って来る」「おっちゃん、行って来るね」

 「分かったよん、楽しんどいで」

 「所長、行ってきます」「はい、はじめちゃん、さくたんと桜花、よろしく」

 きゃっきゃ、きゃっきゃ、わいわいがやがや。がらんがらぁ~ん。「任せて」

 「所長、あとよろしく頼みますね」


 「いいよぉ~、明乃あけのちゃん得物えものは」

 「実弾数発とゴム弾を携帯してます。銃も金属探知に掛からない物を」


 「まもちゃんと娘子隊じょうしたいも同じかな」

 「車両の見掛けは普通ですが、エンジンはさくたん特注、窓は防弾、タイヤも箱も頑丈がんじょうな特殊車両です。銃火器も幾つか積んでます」


 「子供達の手に触れないだろうねぇ~、まもちゃん」

 「大丈夫ですよぉ~、桜花が管理してます。桜花のリンクが切れている時は、私達の生体パスでしか開きませんよ。携帯は明乃あけのちゃんと同じ物を」


 「分かった、じゃぁ~任せるよ」

  「「「「「YesイエスSirサー!」」」」」

 「明乃あけのちゃんまで、そう言うのいいから、まっ、楽しんで来て」

 「所長も、外敵の侵入を許さないで下さいよ」「分かってるよん」

 「それじゃ」「「「「「行ってきます」」」」」


 わいわいがやがや。がらんがらぁ~ん。

 「さてと、桜花」「何」「警備モードへ移行よろしく」「外敵への対応は」


 「10mの外は威嚇いかく、ここを出かけて行った者以外が侵入した場合は足を、手に何か持っている場合は手の甲又は腕、あるいは肩を焼いてくれ、更に接近する者は外敵と見なし防衛モードに移行して迎撃してくれ、ただし、穴を開けるのは四肢ししに限る」

 「おっけぇ~~~」


 あ~~~静かだ。お茶でも入れるか。

 「桜花、音を出してくれ、クラッシックで」「分かった」

 ♪じゃかじゃかじゃかじゃ~んぎゅぅーーーーーーいん。どこどこどこ。

 ロックじゃねぇかっ。

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