第28話 探検隊の成果

 「でさぁ~明乃あけのちゃん、この道は現代の車で走れそう」

 「そこなんですが、桜花、次を出して」「はぁ~い」

 映像が切り替わり、横並びに4枚、それを縦に3列、計12枚の写真が表示された。

 「この写真は数年前、果敢かかんにもたんけ、調査に入った者達がいまして、その時に撮影した物です」


 まず左の一番上に、T字路で見落としていた進入路がうつっている。


 2番目、その隣は両側に鬱蒼うっそうとした木々が生い茂る中を、車1台がようやく通れそうな未舗装ほそうの道に、わだちが奥へ伸びている。


 3番目はもうわだちは見て取れない。

 正確には草の高さの違いで読み取れるが、木々は自由奔放ほんぽうに生存競争を繰り広げ、とても車が通れるとは思えない。


 4番目は、自然石で造ったとおぼしき石垣で、こけむしている。


 5番目以降は、人が歩いて通るのがやっとの道、と言うにはあまりにも粗末だ。


 最後の方は山の谷底だろうか、右側に岩肌があり、崩れたあとがあって、岩の横穴と言うよりは、人が一人収まりそうなくぼみがあり、その下には大きな石がごろごろしている。


 「山、と言うよりジャングルだね」「サバイバル訓練を思い出しますぅ~」

 「車ってどこまで入れるの明乃あけのちゃん」


 「調査した者達によりますと、小さな車なら入り口から約700mぐらいの様ですが、曲がりくねってますから、犯行時のαアルファ車ですと、直線に成っている100~150mぐらいかと」


 「さくたん、はじめちゃん、この道の予備観測できそう」

 「難しいですね」「そうだねぇ~」


 「出来ないの」

 「いえ出来ますが、草や木が多過ぎて、低解像度では草なのか木なのか人なのか、判別できないと思います」

 「だねぇ~、ちゅうぐらいでもきびしいかなぁ~、ねぇ~桜花」

 「そうだねぇ~重力子の密度を上げる事が出来れば何とかなるけど、これ以上あげると、おっちゃんもそうだけど、月や地球に影響が出るかもだし、きびしいかなぁ~」


 「ん、月、地球」

 「そうだよ、地球上の一点にアンバランスな質量の偏りがあると、地軸の傾きが変わっちゃかもだし」

 「何で」「地球は回ってるでしょう」

 「うん、回ってるらしいね、さくたん」「コマ回した事あるおっちゃん」

 「あるよ」「回ってるコマに、水とか掛けた事無い」「ない」


 「う~~~、ようするに地球はコマみたいに、地軸と言う軸で回ってるんだけど、コマって軸が振れてたり、軸の周りのバランスが悪いとすぐに止まるでしょう。これ以上強くすると地球に同じ事が起きて、ふらふらしだすの。そうすると自然環境が激変して、人類の存続が危うくなる。これまで地軸が倒れるのを支えていたのが月なんだけど、どっかに行っちゃうと、やっぱり自然環境の激変が予想されているの」


 「ん~~~、それは大変だなぁ~、良く分からんけど。俺は天動説を信じてるから大丈夫だ」

 「桜花っ、あほがおる」「あんぽんたん」


 「んがぁーーー、ようするに低解像度の予備観測はできないのねっ」

 「そう言う事です、あんぽんたん」「はじめちゃんっ、手は無いのっ」

 「まもちゃん、聞いたぁ~、天動説信者って本当にいるんだぁ~」

 「明乃あけのちゃん、危ないですよぉ~、天に選ばれし者とか言い出しますよぉ~」

 「言わんわっ、何か案、無いのっ」


 「明乃あけのちゃん、この地図の旧ルートATって脇道あるの」

 「正直ここに出した以上の情報が無いのさくたん」「そうかぁ~」「何かあるの」

 さくたん、何かを思いついたのかな。

 椅子の座面に両ひざを乗せて、両手で背もたれを掴み、手の上にあごを乗せる。

 ソファーに座る3人と話し始めた。

 危ないから今度、何か椅子を申請しよう。


 「ぅ~~~ん、ちょっと待ってはじめちゃん、桜花ぁ~、古い地図と最新の測量値を探して距離を測れる。どのみち座標はいるし」

 「まぁ~かせて、ハッキ、調べるの得意だから」


 今何を言おうとした桜花。「桜花ぁ~、ハッキン」

 「出来るよぉ~、データゲットッ」ちょっ、どっから持って来たっ。


 「おっちゃん、だいじょぉ~ぶ、私、ネット上なら誰にでもなれるから」

 なりすましかぁーーー。「おっちゃん、桜花に優しくしないとぉ~」「なっ、何」

 「おっちゃんになっちゃうぞぉ~」「やめれぇーーー」話が進めねぇーーー。


 「おっちゃん、タブレット取ってぇ~」「はいはい」がた。

 「私が」「私」「私ぃ~」立とうとする3人を制する。

 「俺の方が早い」テーブルの上のタブレットを取る。かた。


 「はい、さくたん」「うん、有難う」「「「ぶひぶひぶひ」」」かまい過ぎ。

 さくたんが座り直して、られながら思考を巡らし始めた。


 ぎぃ~、ぎぃ~、ぎぃ~。「桜花ぁ~、T字路の入り口から航空写真で木の葉っぱが無い直線があるじゃない。ここ古い地図と重ねるとどうかなぁ~」

 「ぴったり重なるよ150mぐらいかな」


 「じゃぁ~、その辺りまでは車で入れるのね、明乃あけのちゃんの話だと」

 「ええ、そうよさくたん、何があるの」「分かんないけど、脇道は無いと仮定して」


 「αアルファγガンマを何処へ連れて行ったか知りたいんだけど」

 「あっ、わかった」「あ~なるほど、直線かぁ~」


 「えっ、何、桜花、何わかったのはじめちゃん」

 「何ですかぁ~はじめちゃん、桜花ぁ~~~」

 はじめちゃんと桜花は、さくたんの考えがわかったみたいだ。

 教えてぇ~。「さくたん、何かいい考えがあるの」


 「うん、一本道みたいだし、適当に区切ってその中を更に、観測範囲の3mで細分化してさ、番号を付けてぇ~、対象がいた時”1”、いない時”0”と決めて、バイナリーサーチをすれば、わりと早く探せるんじゃないかなぁ~、とか思ったりして、ねぇ~、桜花、はじめちゃん」


 「うん、行けると思う。3D座標はさっきゲットしたデータで用意できそうだし」

 「うんうん、時間座標は、この前T字路を予備観測した結果から見当けんとうはつくし」

 「だよねぇ~、あらかじめ4次元観測座標は準備出来るし、いけるよね」

 「え~~~と、何か出来そうな方法がありそうなのは、雰囲気でわかったんだけどねぇ~」


 「そうね。でぇ~その何とかサーチってどう言うものなのかしら」

 「さくたんでもはじめちゃんも桜花でも良いからさぁ~、俺に分る様に説明とかしてくれないかなぁ~」

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