第35話 栄えある守衛局
「あ、あれが
遠目に見て最初に驚かされたのは、その人数の多さだ。さすがは帝国の秩序を守る使命を帯びているだけあって、この本部だけでもかなりの人数がいるように見える。
「身にまとっている制服も、なかなかカッコいいでしょ?帝国国民からもかなりの人気なんだ」
「そ、そうなんだ…」
ずっと屋敷に閉じ込められていた私は、それさえ知らなかった。そして建物の周囲には、目を輝かせて守衛局の人々を見つめる子どもたちの姿があった。
「…子どもたちにも、人気のお仕事なんですね」
「ああ、もちろん!」
子どもたちに負けないほど明るい表情で、嬉しそうにそう言うアース。彼からしても、守衛局は皇太子としての誇りの一つなのだろう。
「今の時間ならいるはずだ。行こう」
近くの守衛局員の人に馬を預け、本部の中へと足を踏み入れる。ここの人たちにはアースの顔と立場の情報は共有されているようで、難なく本部に立ち入る事ができた。
「騎士長室は…最上階か」
妙に見にくくて不親切な建物案内図に目を通し、ナイトさんのいる部屋を確認する。ナイトさんに会う事どころか、本部の中を見ることすら初めてな私は、体がおかしくなりそうなほど緊張している。アースの手を強く握り、なんとか勇気を振り絞る。
…何も考えずに歩いていたためか、ほとんど時間を体感することなく目的の部屋の前へと到着する。過呼吸になりそうな私の姿を見て、アースが優しく言葉をかけてくれる。
「…大丈夫だよ、落ち着いて、エステル。君は一人じゃないんだ。僕はずっと君と一緒にいるし、ここにはいないジンも、侯爵も、僕たちを応援してくれてる。僕たちに、力をくれている」
そう言いながら、暖かい手で私の手を包むアース。私の息遣いが少しずつ、落ち着きを取り戻していく。
「…ありがとう、アース。もう大丈夫よ」
アースは頷いて私に返事をし、騎士長室に歩みを進める。扉の前で見張りをしている見張り員の人に事情を話し、最後の準備をする。
「騎士長は、今こちらにいらっしゃいます。お二人のご到着をご説明しに参りますので、少々お待ち願います」
見張り員の人は私たちにそう告げ、ノックをし、返事を確認して室内へと入っていく。その時中から聞こえた返事の声の主が、ナイトさんその人なのだろうか。私は落ち着いて深呼吸を繰り返し、時間が訪れるのを待った。
そして少しして、見張り員の人が中から戻ってくる。
「大変お待たせいたしました。中の方へどうぞ」
彼はそう言い、非常に丁寧な動作で部屋の中へと手を差し伸ばす。私は一瞬アースと顔を見合わせたのち、部屋の中へと足を踏み入れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます