第33話

………


「いいかい? もう一回、言うよ。海賊の頭は多分、大勢いるんだ。カリブ海からどうにかして全て黄金の国ジパングに来たんだ。そこで、その海賊の頭たちだけを一人ずつ倒していくんだ。クラスのみんなはきっと本船にいるだろうし。勿論、最初に言った陽動作戦でね。最後に大海賊ベンジャミン・ホーニゴールドを退治してしまうんだけど。いいかい、そう簡単じゃないけど……全ての頭を失った海賊たちはちりぢりになって、これならいとも簡単にクラスのみんなを助けられるんだ」


 大広間での再びのミーティングだ。

 頭の良いと評判の家来と俺たちが集い。楠田先生の作戦を頭を捻って聞いていた。


「うん? 先生? それとモールス信号はどういう関係が??」

 俺の疑問に楠田先生は笑って答えてくれた。

「ああ、それは一度に全部の海賊の頭を倒すんだよ。だから、当然有効な連絡手段がいるんだ。モールス信号で船と船の間で、みんなで逐一情報を交換していけばいいと思ったんだ」


 楠田先生はチョークで金の襖に書いていた。


「こんな感じかな……」

「うえ?」

 俺は首を傾げた。先生……それはちょっと大胆過ぎやしませんか?

 楠田先生の作戦は、一人ずつ海賊の頭を倒していくんだけど……ほぼ同時になんだよな……。集団暗殺なんて聞いたことないや……。


 つまりは、みんなで船に夜に忍び込み。海賊の頭だけの寝首を掻いていくんだ。その作戦は……台風二号作戦と呼ぼう。最後に本船でみんなを……。


「今から、ここにいる全員にモールス信号を教えるから。しっかりと覚えてくれよ」

 楠田先生はチョークの粉をパタパタと手を叩いて落とした。


「台風に暗殺にモールス信号に……う、うーん」

 俺はこの大掛かりな作戦が大胆不敵過ぎて、緊張感がピークに達していた。周りの家来たちも極度に緊張して武者震いをするものもいた。だけど、煤野沢はいつもヘラっとしていてよくわからない顔だ。


 でも、やっと、まともなこの世界の飯にありつける。

 そう思うとただただ感激してたけど、今は楠田先生の作戦前のため。俺は松の木が突き出ている廊下で子供の頃を思い出していた。


「う、うー、うー。う、うー、うー、……うん?」

 

 そういえば、俺は記憶力は悪いが行動力はあったな。こう、動くことが大好きだった。確か、風と共に走ることが?!


 そうだ!!


 思い出したぞ!


 風と共に走れるんだ!

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