第2話「見たい!知りたい!集合無意識!」(1)
「はい。では次回の予定です。えー。エックスではもう炎上しています・・・、ははは!僕も流行に乗らせてもらいます。はい、『最後のユング』です。えー。100人のユングのクローン・・・。ははは!多いなおい。それがですね。デスゲームをするという。まあ異能物です。みんな『矛盾してる』って言ってますね。これを紹介しようと思います。これマジねえ・・・・。今はやめとこう。次回はちょっと長くなると思います。語れる・・・・、ははは!すごいですから。では」
カメラを止めた。聖司はいつものように紅茶(冷たい)を飲んで落ち着いて動画をアップロードしている。それも終わった。それなりに登録もされているのでコメントもそれなりにあげられる。それが目的というわけではないが楽しみでないわけでもない。なんならたまにそれで喜ぶ事もある。何せ人生の楽しみが映画と漫画とアニメしかない。ファッションは金があるから雑誌に倣うが趣味というほどではない。そして、そこが厄介なのだが、それを共通項として友人を作る気がない。自分ではそう思っていないが言ってしまえば選民思想である。その種の人間と同様、自分が「そのカテゴリーでいちばん長けてる」と思っている。しかし、夢がない。今やってる動画もちょっと気になる配信者に心惹かれたのがきっかけでやってみているだけで、それで生計を立てようとも思っていない。彼には目的がない。
「恋人たちの楽園」
早めの書き込みだった。一瞬、セクシー系の詐欺サイトかと思った、が、どうやら違う。
「夜は千の眼を持つ」「放送禁止」「透明人間」「ゲーデル」「性病」「西南戦争」「ミサイル」「フェラーリ」「磁石」「見張り塔」「真っ赤な空」「大統領」「旅行船」「大きなニュース」「フラスコ」「内閣官房長官」「脱構築」「フランス料理」「インサイダー取引」「マスコットキャラ」「てんとう虫のサンバ」「2つの橋」「死亡遊戯」「90年代アイドル」「政見放送」「古い映画」「パン」「羊の群れ」「大量殺人鬼」「大恐慌」「古代文字」「プリンセス」「看板役者」「記録メディア」「ノスタルジー」「黎明」「歌手」「宮殿」「弾丸特急」「フラワームーブメント」「スナイパー」「セスナ」「今日はなんだか」「ハイウェイ・スター」「超能力者」「ドキュメンタリー番組」「流れ星」「大陸横断」「失われた10年」「素敵じゃないか」「エジソン」「セロハンテープ」「ミルクコーヒー」「クラシック音楽」「ショットガン」「ロングブーツ」「回転椅子」「都会」「メトロノーム」「完全試合」「ブラックリスト」「三段ベッド」「諜報部員」「酔っ払い」「新聞」「大河ドラマ」「卒業論文」
まだまだ続く。俺が知らないだけでネットでは稀に起こる事なのか?それを調べるより先にアカウント(一つのアカウントにつき一言だけ書かれるのが続く)を調べるとその一言だけ書いてその他の事をしていないという共通点が見つかる。しかし「アカウントの量」で考えても一人で出来る量ではない。かといって特定の団体に的にされるような事をした覚えはないし、そういう行為に及ぶ団体があるというのも記憶としては全くない。そんな事を考えてる間にも書き込みは続く。どうしたものか。
「すいません。一応この変な(爆笑)運動なんですけど録画して警察に依頼行ってきますんで(爆笑)」
録画はしていない(当たり前だし、こんな事は想定してないし、これぐらい言えば止める)。しかしこれで止まらなくても相手(とは何なのか?)がおかしいのはこの書き込みという記録で誰が見ても分かる。さあ、どうなる。
「ニュースを見ろ」
書き込みが止まった。テレビは近くにある。いや、待て。ここまでする連中がテレビを操作しないとも考えられない。勘では見ない方がいいと感じる。しかしそれ以上に「この連中」に負ける気がしてむかつく。そうだ、何か起きればそれも録画していたことにしよう。よし。テレビを点けてみた。
「緊急放送/空に巨大不明物体/避難してください」
全てのチャンネルを調べたがどの局も同じ内容であった。どう考えても特撮映画の怪獣だが、現実となると「物体」と呼ぶのだな、と驚きつつ気がつく(考えてみれば特撮の真似をしているかもしれないのだし)。この状況は全世界共通だ。しかし「この書き込みをされているのは自分だけ」なのも事実だ。これは自分の手に負える話じゃない。そうか。とりあえずこの家から逃げよう。何せ怪獣が出ている。それを誇示されている。怪獣以外にも殺されかねない状況だと判断していい。このパソコンは捨てよう。両親とはそもそも同居していなく一人暮らしだ。向こうは金に困らないだろう。スマートフォンはある。今すぐ出よう。
「録画はいい選択だった。そしてこの一連からも分かるように集合無意識は存在しない。」
書き込みは止まっているがこの一文が加えられている。瞬時に反応する事こそが最優先事項だった。
「自演(爆笑)」
「ならばいいだろう。フェーズを移す。心理学者とエネルギーについて短く教えよう。」
「孤
自演と書き込んでから一瞬でその書き込みは行われた。この「孤」という書き込みはどうやらさっきの連投を何らかの方法で止めているようだ。「ならばいいだろう」とは自演と書いた事か?集合無意識と心理学者についての説明とくれば今投稿した「ユング」と関係している、が、あの漫画には怪獣は出てこないし、あそこで書かれている登場人物は全員クローン人間であって俺はあの両親から生まれている。あと、「エネルギー」とは何だ?怪獣と関係あるのか?文からの想像だが状況は状況だ。あと、「フェーズ」って何だ?怪獣が出てきたらもう「次」なんてないだろう?無視して逃げるのも良策だと気づいたのは、自分の自演だという行動を「ならばいいだろう」と「評価する位相にある何者か」だと判断していいと気づいたのと同時だった。
「恐怖はエネルギーになりえる」
「見たい!知りたい!集合無意識!あなたは選ばれました。」
「運が良かった。連中の行動パターンが乱れている。では短く概要だけ話す。ユングとラカンに無く、フロイドにはあるもの。それは他者だ。ユングはそれが分からず、ラカンはそれを現実界と偽った。商売人はそのほとんどが人類をターゲットにし、無知であるほど顕著で、ユングはだから集合無意識を提唱できた。そして連中はユングを利用しているだけで筆者/読者以上の関係にはない。何でもいいわけだ。これは数多くある手段の一手に過ぎない。時間がなくなりそうだ、エネルギーについてさらに短く言おう(君なら分かるであろう)。世界は空間と時間で構成され、この2つはエネルギーによって強制的に干渉できる/される。今回の一件もこの説明で成り立つ。まずは例の生物を君に倒してもらう(概要は直接伝える)。専任理由はこれだ。」
リンクが貼られていて見てみると少し前に書いた自分のエックスへの投稿だった。
「ユング一人でも恐ろしいのにそれが100人もいるだなんて・・・・(爆笑)」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます