spot 3 後編
(テロップ)
【前編のあらすじ】
【エリカの急病でたった一人廃レストランに潜入することとなったアズサ】
【その廃レストランでは、かつてオーナーが包丁で刺された上、冷蔵庫に閉じ込められるという事件が起こった】
【特に何か起こることもなく、冷蔵庫の中に入るアズサだったが、突如エリカから電話がかかってくる】
「……うん? かけてないよ電話なんか」
【しかしエリカのトーク画面には、22:13に着信があったことが残されていた。そして】
「22時13分……今すごく嫌なこと思い出したんですけど。ひっ!」
ドンドンドンッ!
【店内に響く、激しく扉を叩く音】
【いったい何が】
【後編スタート】
「何……? 何の音? えっ、外、誰かいる……!?」
(カメラ玄関を映す。その扉がゆっくり開いた。かと思うと、眩しい光が入り込んでくる)
「誰かいますかー」
(高めの男性の声。モザイクが入っているが服装から彼らが警察官だとわかる)
「……はい」
(アズサ、カメラを床に向けて立ち上がる)
「あっどうもこんばんは」
「こ、こんばんは」
「えっとこちらで何を?」
「調査と撮影、です。あ、えっと許可はとってます。××さん(土地所有者の名前)から」
「あっ、そうなんですね。え、今も撮影されてます?」
「はい。一度止めた方がいいですか?」
「いえいえいえ許可下りてるならいいんですが、ただ近隣の方から人が入ってくのが見えたと」
「あー」
「ええ。二人組が」
「え? 二人?」
「ええ」
(テロップ)
【二人、店に入っていった?】
「一応身分証明書見せてもらえますか?」
「は、はい」
「……はいありがとうございました。えっともうひと方は……」
「私、一人ですけど」
「一人?」
「ええ。ほんとです。この動画見ていただければわかりますけど……」
「はあ、さようですか……」
「通報があったんですか?」
「ええ。しかし、まあ、もう夜も遅いですし、くれぐれもお気をつけて。ここ、いろいろと、ね」
「はい。承知しています。すみませんご迷惑をおかけしました」
「いえいえ。じゃあ失礼しますね」
「はい」
カット
(ずっと床を映していたカメラ、再びアズサの顔を映す)
「めちゃめちゃびっくりした……。まさか警察のお世話になるなんて。……それにしても二人……。エリちゃんの生霊でもついてきてたんでしょうか」
(アズサ、開けっ放しの冷蔵庫を閉じる)
「この廃レストラン、特になにか幽霊とか見たわけではないんですが、とにかく寒いんですよね……。冷蔵庫の中で、っていう話を聞いたからなおのこと不気味」
(アズサ、バックヤードからカウンターに戻る。そして玄関の前に立ち、もう一度店内を映す)
「はい。今回はここらへんで終わりにしたいと思います。何か映ってるかな……。まあ、それは編集してからのお楽しみにして、今日はエリちゃんにポカリでも届けて帰りましょう」
暗転・カット
(テロップ)
【それから数日後】
『ふー……』
(机の向こう、クマのプリントがあしらわれたグレーのパーカーを着たエリカ、鼻歌交じりにスマホを見つめている。机の上には黒い炭酸飲料のペットボトルとサンドイッチがある)
『じれったあいじぃれったい わたしはわたしよかんけーなーいわー とく……」
「エリちゃんもう動画回ってるよ」
『えっ嘘やめて今のとこ絶対カットして』
「わかったわかった」
カット
「こんばんは。アズサと」
『エリカです』
「すっかり元気になって」
『はいおかげさまで』
「まあそれはどうでもいいんですけど」
『えっ』
「あのですね、皆さんに謝罪しないといけないことがあって。あの、お巡りさん来る前に、私何か言いかけたじゃないですか。で、あの話するのをすっかり忘れてて」
『バカすぎるよね』
「しゃあないでしょ。イレギュラーなことあったんだから。で、何の話かって言うと、私からエリちゃんに電話がかかってきたと。でも私はかけてなくて、何だろうねってなったんですけど」
『あれほんとにかけてないんだもんね。不思議』
「ね。で、エリちゃんの携帯にかかってきた時間が午後10時13分だったんですけど、その時間っていうのが、オーナーが刺された時間、だったらしいんです」
『……』
「そうなると、ちょっと怖いよね。あの場にいた私からエリちゃんのスマホに、まさにその時間に電話が届くって、偶然が重なりすぎてる。しかもその時間、私あの冷蔵庫の中にいたわけだし、お巡りさんとこにも、二人入ってくの見たって通報あったらしいし」
『やらせみたいな現象だったね』
「うん。まあ信じなくても私は構わないですけど、一応報告でした」
暗転・カット
(テロップ)
【最後にエリカの携帯に届いていたボイスメッセージを見ていただこう】
【ただし、この音声は非常に不可思議なものである】
【この音声を聴いたことによって起こった「なにか」について、私たちは一切責任を負わない】
※再生まであと5秒
(ノイズが大きい。しかしわずかに、女性の声が聞こえる)
「…………ちょっと…けてみ……おも…ます。なにっ……!? 今……………じゃ…あ…ますね」
カタッ……ズズズ……
(謎の大きな音が鳴った。すると女性の声が少し大きくなる)
「さされ…あといき……たん……か……だとしてもこのとびらは……あけられ…」
(わずか20秒ほどの音声が終わり、説明もなく動画は終わった。あとは
↺(もう一度見る)
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質問&リクエストなどなど募集中です
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※この物語はフィクションです。無許可で廃墟などに立ち入ることは辞めましょう。もちろん私(蓬葉)もしません。法律が許してもそんなことしません。
また、この話は書き下ろし風の展開になっていますが、元動画があるわけではありません。
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