5日目

「ダ ガーネ ピュー、セイト!」


 これだ!


――――――――――――――――――――


 「ピュー」は挨拶で使うんだ。

 さっき言われて思い出した。


 え、でも。

 挨拶で結婚するなんて言うのかな……?


 いや、きっとこの「ピュー」という言葉には複数の意味があるんだ。

 結婚するではなく、仲良くするって意味かもしれないし。


 もしかしたら、その前にある「ダ ガーネ」が重要なのかな。

 たしか「ダ ガーネ」って神様の名前だったよね?


 僕は本棚からあの本を引っ張り出す。

 えーと、たしかここらへんの……。


 これだ……。

 男女が向かい合っている絵。

 その真ん中に、見守るように立つ神様。


 え、やっぱりこの神様って恋愛だよね……?

 友情の可能性もあるけど、男女のこんなに幸せそうな顔を見るに友情じゃなくて恋愛に見える……。


 いやいや!

 これは挨拶なんだ!

 「ダ ガーネ」も「ピュー」も、きっと僕が意味を知らないだけ!

 あと、あれかもしれない!

 こう……定型文になってて意味がなくなってるみたいな!

 「こんにちは」だって、「今日こんにちはいい天気ですね」の略とかなんとか!


 変な想像を振り払うように頭を激しく動かす。


「セイト?」


 気づくと彼女が後ろに立っていた。

 僕の挙動不審な様子を見られてしまった。


「ダ ガーネ……ピュー! リーネ!」


 ごまかすようにさっきまで考えていた挨拶を叫んだ。

 どうだろう、あってるかな。


「……!」


 彼女は驚き、顔を真っ赤にした。


「リーネ?」


「……」


 僕が声をかけると、この前みたいに逃げられてしまった。


 でも、その反応でわかったよ。

 挨拶の意味。

 わかったからには、僕も彼女の思いに答えなきゃ。

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