第19話 悪戯
その代わりに、宮中では女官や侍官、それに官吏たちまでもが廊下をきょろきょろと見回す様子がよく見受けられるようになり、『
ある意味、宮中を歩き回っている時よりも人気者ではあるかもしれない。
............とは言え、その噂の根源は当の本人であるためなんとも言い難いのが本音ではある。
それは
流す噂の内容を考えている時の星華のにんまりとした表情は、これから一国の王になるという人のものにはとても思えなかった。
「ねえねえ鵲鏡!『恋人の元へと消えた
「そうですねぇ......。それなら、『愛の
「わっはっはっ!!なにそれ、傑作だわ〜!!!これで一週間は笑える!!」
「うふふ。そうでしょう?語り部に転職しますかね〜」
「鵲鏡ならうまくやっていけるわよー!きっと虹星国一の美丈夫語り部になるわ!!......そうだっ!!『身分違いの美青年との禁断の恋♡』とかどう!?」
その言葉に、鵲鏡は
「鵲鏡??」
「いえいえ、ちょっと怪しい虫を見つけまして。」
「何それ!?怪しい虫って......っ!!虫は虫でしょ?!今日の鵲鏡、いつにも増して面白すぎるんだけど!!」
「いつもと同じですよ??......さっ、流布する噂も決まりましたしあとは私共にお任せを。星華様はお勉強なさって下さい。」
「えっ......。で、でもまだ............、」
「頑張って下さいね。星華様にはこれから、行儀作法や話術、貴族方の力関係に領地の現状など、まだまだ学ぶべきことがたくさんありますし、万一のことに備えて剣術も磨かなければなりません。見守ることしかできない私にはこのような事しかして差し上げられませんが、応援していますよ。」
思い詰めたような鵲鏡の表情に、星華は口をパクパクとさせるばかり。そんな星華は鵲鏡を前にして、たとえ違和感があったとしても返せることができる言葉はただ一つ。
「あ、は、はい......頑張りマス............。」
耐えようにも耐えきれないように、鵲鏡は口角にほんの少し笑みを浮かべていた。その様子を見て、この悪戯の仕掛け人はもしかすると星華ではなくこやつなのかもしれない、と側に控えていた迅楸は思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます