第2話 ラマダンに乗っかって
私は、ムスリムでも、特に憧れているわけでも無い。
でも、間もなくラマダン【断食月】が始まるそうだし、それに乗っかって、断食ダイエットするのも有りと思えた!
食いしん坊の私が、1人でダイエットすると三日坊主で終わりそうで、あまり成果望めないけど、同じタイミングで断食している人々が地球上に沢山いると思えば、やり甲斐も有るし、連帯意識が芽生えて続けられそう!
ひと月も続けるのは無理かも知れないけど、そこそこ効果が現れるくらいまでは、きっと続けられると思う!
水は飲めるし、水だけでも、しばらく生きられると思うし。
断食デトックスして、制服が似合う素敵な女性になったら、もしかしたら、彼氏も出来たりなんかするかも!
ラマダンの断食前夜は、思う存分食べていいらしい!
なんて素敵な風習!
そうだよね、これから1ヵ月も断食続けるんだから、ここで食いだめしておかないと!
作るのは大変だし、買うのも色々買ったら高くつきそうだから、和洋中のバイキングのレストランに行った。
ここで、色んな料理、心行くまで食べ続けて、シアワセな思い出を残し、腹12分くらいになった時にちょうど制限時間となり、レストランから出た。
はぁ~、食べた~!
断食前夜のこの満腹でシアワセな思い出。
これがあれば、私は、これからの1ヵ月の断食をムスリム達と共にやり遂げる事が出来る!
さあ、断食前夜の思い出と共に、新たな一歩を踏み出そう!
断食1日目
毎日三食欠かした事の無い私にとっては、朝抜くだけでも、かなりしんどくて、フラフラになってる。
お腹周りも、朝から空腹だからきつくない。
「真知子ちゃん、今日は、豚角煮丼が特売よ~!」
昼休憩に入る時に、総菜コーナーの店員さんが声かけて来た。
豚角煮丼!
はぁ~、私の大好物~!
どうして、よりによってラマダンの初日に豚角煮丼なの?
「今日は、ちょっと体調悪いからパスで~す」
豚角煮丼、特売なのに......切ない。
切ないのは私だけじゃない!
きっと、ムスリム達もこんな思いを1ヵ月繰り返しているの!
あれっ、ムスリムって豚肉食べられたっけ?
仕事を終え帰宅しようとした時、総菜コーナーの店員さんが、私がさぞかし空腹だろうと心配して、余った麻婆豆腐をパックに入れて持たせてくれた。
お昼に断った経緯も有るから、せっかくの好意を何度も断るのが申し訳なくて、頂いて帰った。
麻婆豆腐......
美味しそう、空きっ腹だから、もう何でも美味しそうなんだけど。
ううん、こんな誘惑には負けない!
「ただいま~」
共に田舎から出て同居している大学生の弟、
「おっ、麻婆豆腐!」
ここで視界に入り続けるのは、私にとって目の毒だから、由吉に食べてもらおう。
「食べていいの?麻婆豆腐には、ご飯だな!お米炊こう!」
ご飯の炊ける匂いが鼻に届く。
う~、白いご飯だけでもいいから食べたい!
「姉ちゃんは、食べないの?」
「私は、ラマダンなの!」
私の言った『ラマダン』イコール『ダイエット』と解釈した由吉。
「麻婆豆腐、うめ~!」
由吉の声を遮るように、由吉の前で大声で宣言して見せる。
「世界中のムスリムが、今、私と同じ気持ちでガマンしている!私にも出来る!」
「時差有るから、今、同じ気持ちか、分からなくね。あっ、向こうが遅いから真っ只中か。アメリカとかのムスリムは、食事してるかもな」
あれっ、なんか由吉がよく分からない事、言い出した。
高卒の私より、頭良いと思って話すから、鼻につくんだよね。
「ラマダンなんだから、断食してるの!大学行ってて、そんな事も分からないの~?」
「えっ、まさか、姉ちゃん、ラマダンが、1ヵ月ずっと断食していると思い込んでた?」
「断食月なんだから、あっちの方は太陽暦か太陰暦か知らないけど、約1ヵ月ずっと断食なんでしょ?よく生きてられるよね~!信仰心ってスゴイわ~!」
空腹の私の目の前で、由吉が美味しそうに食べてる事にイラつきながらも感心していると、由吉が爆笑し出した。
「ラマダンは、ずっと断食してるわけじゃなくて、日の出から日の入りまでの時間帯だけの断食!だから、もう、日も落ちたし、食べてOKって事!」
えっ、もう食べていい時間なの?
そうだよね、こんな空きっ腹だったら、眠れなくて、明日の仕事に響きそう。
でも、今更言われたところで、もう、麻婆豆腐無くなってるんだけど!
炊き立てご飯も残って無い......
仕方ないから、非常食用にストックしてあるインスタントカレーと『さ〇うのごはん』を食べよう!
「ああ、ごはんって、こんなに美味しかったんだね~!感動した~!」
空きっ腹の時に食べると、どんなものでも美味しく感じられる!
満たされて眠る事の出来る、この幸福感!
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