第191話 福者認定(ふくしゃにんてい)
「ド○えもん~!」
まるで、困難に直面してネコ型ロボットに泣きつくメガネ小僧のように、僕はパウロ大司教にすがりつく。
だって、幽霊……幽霊が出たんだよ!
今まで転生者がいるんだから、幽霊くらいいるよと高をくくっていたけどさ、実際にその場に居合わせたら怖くて怖くて仕方がない。
むしろ、実体を持つスケルトンやゾンビといった魔物の方が現実味があってホッとするほどだ。
僕がエトガー神父の幽霊と出逢ったと知った後、教会へと戻ってみた。
ボロボロの教会には相変わらず人気がなく、幽霊が出たと思うとどことなく不気味さが漂っている……ようにも見える。
僕とエトガー神父が話していたロビーの床にはうっすらとホコリが溜まっていたが、そこに残された足跡は
つまりは、僕以外にロビーには人がいなかったということ。
そして、決定的だったのがエトガー神父が埋葬されたお墓。
その墓石の上に、僕がエトガー神父に手渡した財布が乗っていたのだ。
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
前世でも消防士という仕事柄、多くの死者に相対して来たが、それはそういうものだと割りきって対応していた。
ましてや、幽霊がいるなどとは考えたこともなかった。
よく、動画サイトで怪談話や廃墟探検ものの動画を見ていたが、それは僕が今まで幽霊と出逢っていなかったから、ほどよいスリルとして楽しんで来れたのだ。
それが、まさか転生した先でこんな目に遭うとは…………。
ええ、もうその瞬間にアグニスの教会まで転移して、パウロ大司教に泣きつきましたがな。
僕が知る限り、こういったことに最も頼りになると思われる人物。
何しろ「大司教」だよ。
【
それより少ない「枢機卿」はって?
うん、あの人はダメだと思う。
僕は金貨の山を前に高笑いする女傑の姿を思い出して、この件には全く役に立たないだろうと切り捨てる。
そんな訳で、僕はアグニスまで帰って来たのだった。
久しぶりに戻ったアグニスの教会は、平穏で僕たちが旅に出たときと何も変わらなかった。
「あっ、アル兄だ!」
「あらあら、聖者さまお帰りになったのですか?」
「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
「お帰り~、お土産は?お土産は?」
数ヵ月ぶりに会った人々は、温かく僕のことを迎え入れてくれる。
だけど、ゴメン。
僕には今、それに応えるだけの心のゆとりが無いんだ。
そうして大司教の執務室へと飛び込んだ僕は、一連の経緯を説明すると何とかして欲しいと頼み込む。
すると、パウロ大司教はご自慢の顎髭を撫でつけながら、柔らかな笑みを浮かべてポツリと呟いた。
「エトガー……、ずいぶんと早く亡くなってしもうたのう……。それにしても……。そうか……お主はついに【福者】へと至ったのじゃな……」
………………福者?
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
怪談話やホラーものって、実際に幽霊に出会っていないから楽しめるというのもありますよね。
作者もよく動画サイトで見ています。
モチベーションにつながりますので、★あるいはレビューでの評価していただけると幸いです。
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