第49話 獣王の艱難
「ベリル様。武神様が八部鬼衆の【ドヨン】を倒しました!」
「真か!?」
「はっ、オリハルコンの大盾ごと両断です」
豹獣人の配下が息せき切って部屋にやって来て、とうてい信じられないようなことを報告する。
おいおい、どうやったら、あの
かつて、あまりの切れ味の鋭さに、さも名のある剣かと思い見せてもらったからこそ、その異常性がよく分かる。
それはどこからどう見ても、数打ちの鉄の剣にしか見えなかった。
駆け出しの冒険者が初めて手にするような、折れても当然の貧相な剣。
そんな剣で、【
(相手は神よ。我々の常識など役には立たん)
私【ベリル】は、一瞬、意識が飛びそうになるほど驚くも、慌てて思考を切り替える。
私にはやらなければならないことがあるからだ。
「ドヨンは、西方守護だったか…………」
「はっ、監視の者から西方はもぬけの殻との報告も来ています」
「よし、【ティガ】の部隊を向けろ!いいか?死んだら死んでも三日以内に連れて来るように徹底しろ」
「はっ!」
何だか訳の分からない指示になってしまうが、それは仕方のないことだ。
なにしろ、古来より戦とはいかに効率よく味方を殺すかを突き詰めるものであったのだが、武神様の陣営に与するだけで、その前提が狂うのだから。
仮に、100人対100人の戦いがあり、味方を10人殺すだけで相手を全滅させられれば、それは大勝と呼んでも差支えないだろう。
一方で、相手を全滅させても味方を99人も殺せば無能との
これが効率の良くない味方の殺し方ということになる。
ところが今回の戦だけは違う。
味方を99人殺したとしても、三日以内連れて帰りさえすれば、武神様が全て蘇生させてしまうのだ。
もはや、言い換えるならば、我々の軍は【不死の軍団】なのだ。
実際に、今回西方に向かわせる虎獣人の【ティガ】は、もう片手では済まない程に蘇生を繰り返している。
「武神様はすげぇぞ。神々の住む山の麓までやってきて俺たちを連れ帰ってくれるんだからよぉ」
もはや、蘇生のベテランと言えるティガの言葉であるが、ちょっと何言ってるか分からない。
人は死ぬと、神々の住む【ヴァルハラ】と呼ばれる聖なる山に召されるというが、そのことだろうか?
とにかく、死ぬことによる兵士の減少を考えなくてもいいということは、魔王軍に対して大きなアドバンテージとなる。
こうして、我々は聖地【ウィヌム】を奪還した上で、さらなる魔王軍占領地の解放を行っているのだが、ここに来て問題が生じてきた。
解放した土地を守る人手が不足して来たのだ。
現在、占領地から解放するために戦っているのは、我々獣人だけ。
武神様とお弟子様は、この聖地を奪還するためにやって来る魔王軍を返り討ちにして下さっているために動きようがない。
武神様が、帝国に応援を求めたと聞いてはいるが、本当に来てくれるのだろうか。
それとも、これ以上の解放は諦めて、現在の土地を守るために戦力を集中するべきか。
答えの出ない問いに、私が思案していると、ついにその日が訪れた。
その日は、これまでよりも遥かに多い魔王軍が、ここ聖地ウィヌムへと押し寄せたのだ。
当初は僅かな手勢だと侮っていた魔王軍側は、近くにいる部隊を連携もさせずに戦場に投入していた。
敵は、いわゆる『兵力の逐次投入の愚』を犯していたのだが、ここに来てようやく戦力を集中しようという気になったようだ。
「ついに奴らは本気になったということか……。誰か!迎え撃つぞ、兵士たちに伝え……………………よぉ!?」
私が魔王軍を残存兵で迎え撃つべく、兵士たちに号令をかけようとしたそのとき。
蒼天を埋め尽くすほどに無数の流星が地上へと降り注いだ。
大地を揺るがす轟音と数多の悲鳴。
視界を塞ぐ砂埃が宙に舞う。
「………………えっ!?」
砂埃が晴れたとき、そこにあったのは魔王軍兵士の躯。
「まさか君が来てくれたとは」
軍神様が、笑いながら振り返ると、その視線の先には、バトルドレスを身に纏った弓師の姿があった。
「当たり前よ。アルちゃんが動くとなれば、これはもう勝ち確でしょ?ここまでお膳立てされた、勝てる戦いに参加しないとなったら女の恥よ」
「あんまり期待しないで欲しいんだけどな……」
「いつまで待ったと思ってるのよ。チャッチャとやりなさい」
「あんまり期待しないで欲しいなぁ」
「もう諦めなさい。一旦、表舞台に立ったらもう逃してはもらえないわよ」
そう言って、ウインクする弓師は、獣人の中でも大柄な私よりもゴツく、やたらとケバケバしい化粧をした男…………否、
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
援軍登場。
果たして彼?彼女?は誰でしょうか?
今後の展開にご期待下さい。
モチベーションに繋がりますので、★あるいはレビューでの評価をお願いします。
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