9-3
「ねえロルフ」
「なんですか?お嬢様」
「サーヴを幸せにするとおっしゃいましたけど、具体的にはどう幸せにしますの?奴隷のロルフのほうが地位というか立場は低いでしょう?」
「それいっちゃいます?まあそうなんですけど、一応お嬢様にプロポーズしたロリコン変態怠慢吸血鬼魔王の息子なんで、それなりには立場はあると思う」
「でも奴隷ですわよね」
「お嬢様が奴隷を解除して、正式に使用人としてくれれば問題ないと思う」
なるほど、その方法がありましたわね。
ロルフが私に刃を向けるような人ではないということは、数か月間一緒に暮らしていてわかっておりますし、奴隷の解除をしてもいいかもしれませんわね。
でも、そうなりますとやっぱり王都に行かなくてはいけませんから、具体的な日にちと時間を冒険者さんに確認してもらわないといけませんわね。
戻ってくるときのことも考えないといけませんものね。
サーヴとロルフが結婚して私に仕えてくれると、私はうれしいのですけれども、先ほどからロルフを観察するように見ているサーヴは実際のところどうなのでしょうか?
「サーヴはロルフに好感を持っているのでしょう?少なくとも、普通の男性に対する距離よりは近くを許す程度には」
「そうでございますね。共にお嬢様にお仕えする者として好感は持っております。ただ、お嬢様の悪ふざけを止めないところはどうにかしていただきたいものです」
あら、私にも飛び火しそうですわね。
小部屋探しは今も続けておりますけれども、温泉以外は全部からのお部屋ございました。世の中上手くいきませんわね。
「まあその話しは置いておいて、男性として見てロルフはどうですの?年齢は少し離れておりますけれども、外見年齢はさほど離れておりませんでしょう?それに、ロルフも血の契約をすることが出来るそうですし、そうなればずっと一緒にいることが出来ますわよね」
「それは魅力的でございますが、それだけで結婚を決めるというのはどうかとおもいます。もっと人となりを見てからでないと」
「そうなのですか?」
王侯貴族の結婚というものは政略結婚は普通で、そこにあるのは基本的に利益のみだと思うのですが、サーヴはどうやら恋愛結婚主義者のようですわね。
ちなみに私はアベリル様に恋愛感情を抱いているかと言われたら、わからないとしかお答えできません。
好感は持っておりますけれども、好きではありますけれども、愛しているかと言われたらわかりませんわ。
王侯貴族は政略結婚、平民は恋愛結婚というのがこの国の常識になっておりますが、貴族にももちろん恋愛結婚する方は少数ですがいらっしゃいます。
もっとも、穏やかに話しが進むということはめったにございません。基本的には幼いころから婚約者か婚約者候補がいるものでございますからね。
ちなみに私は夢の中では諸外国の王子様方の婚約者候補でございました。革命がなければおそらく一番有益な国に嫁がされていたのではないでしょうか?
そのこと自体に文句を言うつもりはありませんわ、そういうものだと思っておりますもの。
むしろ婚約者やほぼ確定している婚約者候補がいるのに、他の女性もしくは男性と結婚すると言い出すほうが、大変だと思いますわ。
自分は良くても自分の家と相手の家を巻き込むことになってしまいますものね。
そういえば、夢の中の学園生活でそんなことがありましたわね。
男爵令嬢が侯爵子息に気に入られて結婚を迫られて、私にどうにかしてほしいと相談されたものです。
男爵令嬢にも婚約者がいらっしゃいましたし、政略結婚ではありますが幼馴染で、恋愛感情もあったので上位貴族から迫られて困ってしまったようでございます。
侯爵子息の婚約者のご令嬢は自分の婚約者が他の女性を追いかける姿を見せつけられて、気を病んでしまって私に泣き言を言いに来ましたわよね。
結局侯爵子息の方は婚約破棄になりましたけれども、男爵令嬢はその前に結婚してしまいましたので結婚することはもちろんできず、婚約破棄されたご令嬢には私が別の男性をご紹介しておきましたが、侯爵子息はそう言えば夢の中で最後まで一人だったのではないでしょうか?
大事になった割には、結局侯爵子息の一人芝居だったように思えますわね。
「どうしたら愛していると思えるのでしょうね」
「わかりかねます。けれども、その人となら一生添い遂げたいと思えれば、それは愛なのではないでしょうか?」
「ロルフと一生一緒に居たいとは思いませんの?」
「長くともにお仕えするのだろうとは思っております」
「それは愛とは違うのですか?」
「仲間意識というものかと思われます」
「そういうものなのですか、恋愛感情というのは難しいものでございますわね」
「私もよくわかりません」
「サーヴにわからないなら私には全く理解できそうにありませんわ」
「アベリル様に対してはどうなのですか?」
「良い御方だとは思っておりますけれど、愛しているかと言われたらわかりませんわ。夫となる御方なのですから、ちゃんと愛せるようになるといいのですけれど」
けれど、先ほど膝の上に抱き上げられた時はドキドキいたしましたし、あの黒い目で見つめられると、頬が熱くなるような気がいたしました。
愛ではありませんけれども、これが恋というものかもしれませんわ。
「でも、恋をしたかもしれませんわ」
「恋でございますか」
「ええ、だってあんなにドキドキしたんですもの。夢の中で読んだ書物にあった恋という感覚に似ているのではないでしょうか?」
だとしたら、いつかこの感情が愛に変わる日が来るのかもしれませんわね。
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