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 市場には屋台というものだけではなく、露天というものもあるようで、様々なものが売られています。

 王族としていた時には目に入れることが無いような粗末なものも売られていますが、素朴でも綺麗だと思えるものもたくさんありますので、とても楽しいですわ。


「おじさん、串焼きを二本ください」

「あいよ。・・・お嬢ちゃん、その仮面はどうしたんだい?」

「えっと、お世話になってた貴族の屋敷の人に傷つけられちゃって、見られたくないから・・・」

「そうかすまないな」


 やはり気になりますよね。でも私の作戦は完璧だったようでしっかり納得していただけたようです。

 串焼きというものは牛の肉と野菜を交互に串に刺した焼いてもので、食べるときとても熱くて驚いてしまいましたが、とても、とってもおいしかったです。

 王城ではありえない味付けだったのにも感動しました。薄味が上品とされているので、スパイスの利いたお肉というものがこんなにもおいしいのだと初めて知ることが出来て感動です。


「サーヴお姉ちゃん、あの露天では装飾品が売っているみたい。サーヴお姉ちゃんに似合いそうなものがあるかな?」

「そのようなものは必要ありません」

「そうなの?じゃああっちの生活道具のお鍋とかを見て回りましょう。スパイスもあればお料理に幅が出来るかもしれないわ」

「それは良い考えですね」


 サーヴの腕を引っ張ってあっちこっちの露店を見て回ったり、小腹が空いたら屋台で食べ物を買って4時間ほど過ごすと夕暮れが近くなってきましたので、ダンジョンに戻ることにいたしました。

 やはり私たちがいたダンジョンは迷宮ダンジョンと呼ばれるものだったようです。高難易度のダンジョンなのですが、1階はまだそれほど強いモンスターがいないので暮らしていけそうです。いずれ地下に下りてみようとは思いますが、無理はいけませんよね。

 そういえばダンジョンにいる間に他の冒険者さんに会うことはありませんでしたが、どうしてなのでしょうか?

 人気のないダンジョンというわけではないはずなのですが、ベテランの方々が挑むダンジョンですし、1階は無視してもっと深いところを探索しているのかもしれませんね。

 冒険者ギルドにいらっしゃった方々はどこか品がありましたし、やはり貴族の子女の方々が多いのでしょうね。


「グレタ、早くしないと日が暮れてしまいます」

「はーい」


 二人で連れ立って王都を出て迷宮ダンジョンに向かいますが、出るときは特に身分確認はされないのが不思議です。

 このような王都を出ていく人も多いので、効率的に考えて手間を省いているのでしょうか?

 もっとも、身分証を発行してもらいましたので、次からは賄賂を払わなくても大丈夫ですわね。


「はあ、楽しかったですわ。この姿でも少しだけしか怪しまれませんでしたし、私も王都に行くことが出来ますわね。そうそう、あの露天や屋台というもの、とっても素敵ですわ!私とっても気に入りました」

「冒険者ギルドでは依頼を受けることも可能なようですが、私たちは身分証を発行してもらうことと、ドロップ品を売ることが目的なので活用することはないでしょうね」

「そうね。でも見てて思ったのだけれども、登録していない人でも依頼を受けることが出来るみたいね。もっとも報酬が随分下がってしまうみたいだけれども」

「そうですね。この王都には登録したくてもできない人が多いので、その人たちへの救済策なのかもしれません」

「犯罪者関係の称号を持て居ると登録できないんですものね、この王都の子供、特に孤児なんかにはとっても不利だわ」

「それでも生きていくためにはしかたがないことです」

「そうね、私だって生きるために盗人になったんだもの。皆行きていくの必死なんだわ」


 犯罪者になったからって落ち込む必要なんかありませんものね、私は生きるために必死なのですから腐った王城から少し物を盗み出しても、仕方がないと前向きに考えることにいたしましょう。

 ええ、でも盗人は犯罪者ですわ。良くないことではありますわね。

 迷宮ダンジョンに辿り着いて、いつもの小部屋に辿り着いて今日買ったものを整頓していきます。

 小部屋にはベッドのよう物も作ってありますし、平民の小さな家の様な感じになってきました。インテリアも今日買ってきましたのよ。この薄暗い中でも育つという植物を買いました。

 そういえばこの部屋の事ですが、大体10メートル四方の正方形に近い部屋になっていて、恐らく元は宝箱などが安置されていたのではないかと思います。

 ダンジョンの宝箱は所定の場所に有ったり、途中に不意に現れたりするそうなのですが、私たちは今のところ見つけてはおりません。滅多にお目にかかれないということなのでしかたがありませんわよね。

 ベッドが二つと料理スペースとお風呂と排泄用のスペースがありますが、これまで殺風景だった部屋に植物を置くことで少しだけ見栄えが良くなった気がします。

 植物一つでこうも変わるなんて、不思議なものですね。


「ねえ、今日の夕飯はなにかしら?」

「今日はたくさん召し上がっていらっしゃったので、軽めのものにいたしましょう」

「そうね、そういえばいっぱい立ち食いや買い食いをしましたわ。本当に素敵な体験でした、王城に居た時には体験できないものでしたわね」

「はしゃぎすぎて熱を出さないように気を付けてくださいね」

「まあ!もう小さな赤ちゃんではないのですもの、大丈夫ですわ」

「まだ6歳の子供でいらっしゃいます」

「むぅ」


 私は小さい時から、あまりはしゃぎすぎると熱を出してしまうということがありましたので、サーヴはそのことを気にしているのですが、心配のし過ぎですわよね。

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