シミ

何年前かのことでした。

地面に捨てられた白い紙切れが

雨に打たれて

車に轢かれて

白いシミになりました。

そのシミは次第に大きくなって

やがて街を飲み込んでいった。

当時の僕はその白いシミが

布を被ったお化けに見えていたようで

喜んで手を伸ばして掴むと

根元から腕を持っていかれました。

ちぎれた腕の切断部を見て

僕は何を思ったのか分かりませんが

代わりに落ちてた木の棒を突き刺すと

白いシミから距離を置きました。

シミはゆらゆらと踊るように揺れながら

次第に膨張していきました。

僕はため息をついて家に帰ると

片足の無い妹を撫でてから

ゆっくりと床に着きました。

目が覚めると辺りは真っ白な空間が

どこまでも続いていました

僕はそれが夢ではないかと思いましたが

あのシミを思い出してしまいました。

ふと体の方へ目を向けると

腰から下が消えていました。

僕はナメクジのようになりながら

池の近くまで這って行くと

水の中へと飛び込みました。

チャプンと小さな音が聞こえて

水の中で溶けました。

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