魔法を使えなくても大丈夫です。だって私は魔法の完全上位互換である魔術があるので。
砂糖海月
第1話
みなさん。
突然なんですが私こと、
日本で女子高校生をしていた私がプラテクチタ王国という国の貴族になってしまいました。経緯とかはあまり詳しくは覚えていない?というか思い出せないけど、高校生1年?の時にこっちの世界に来たような気がします。
物心つくまではまさか自分が転生してこの世界に来たなんて思いもしなかったです。
私には前世があって日本という国で暮らしていた、なんて言っても誰も信じてくれないんだろうなぁ...
転生後の名前はレイチェル・ルーナ。レイチェルの部分は家名と呼ばれる部分で、私はレイチェル家の4番目の子供。私の上には2人の兄と1人の姉、下には妹が2人の合わせて6人兄妹と、転生前では考えられないくらいに多い。
血筋を途絶えさせないようにするための工夫とかなんとかなんだと思う。そこそこ偉い貴族みたいですしね。
転生をして早いことにもう10年がたって、もう少しで11年になろうとしています。
話は変わりますが異世界といえば何を思い浮かべますか?
そう、そのとおり!魔法ですよね!
火の玉を飛ばしたり、味方を回復したり、身体能力を強化したりすごいイメージの魔法。
この世界にも魔法はやっぱりあって、魔法師団なる夢の職業もあるのだとか。
でもこの世界の魔法は誰でも使えるわけではないらしく、貴族などの高貴な身分の人が魔法適正測定という儀式を受けて自分が使える魔法の属性を理解するそうです。
その後には学校で魔法の扱いについて詳しく勉強するみたい。
ただ、その前に色々授業で予習はしてる。
魔法の属性は火、水、風、土、光、闇という6属性がある。基本は1人1属性、多くても2属性しか使うことができない。ただ、歴史上の人物で3属性使ったりしている人もいる。
魔法を顕現させるために必要な過程は大きく分けて
まずは循環。
体にある“魔力”を感じる。曰く、血液の流れと似たようなものだそうで体全体を循環して流れているみたい。その流れをまずは感じる必要がある。
その後は蓄積。
魔力の循環を止めて、一点に集中させる。しっかりと集めておかないとこの世界に放出できるほどの力にはならない。魔法とはこの世の理の外にあるもの。それを顕現させるためには少しばかりの力では理に弾かれてしまう。だからしっかりと集中して魔力を集める必要がある。
そして放出。
自分の魔力を体外に押し出す。大気にある魔力と体に流れている魔力では少し性質が違うらしく、魔法を飛ばせば飛ばすほど大気の魔力へと溶けていく。つまり遠くへ飛ばすほど威力が下がる。ただそれがなぜなのかは魔法の中でもかなり大きな問題提起となっている。
この過程が魔法を放つまでに必要なもの。
おや?そこのあなた。こう思いましたね?じゃあ剣で切りかかればいいじゃん、と。
そうです、誰でもそう考えますよね?
誰が最初に思いついたのか、あなたたちが思いついたように魔法を唱えている人に剣を持って突撃した人がいた。その結果、どうなったと思います?
ドカン、です。魔法が暴発したんです。魔法の集中を乱された魔法使いは魔力の制御を失い、切りかかった人もろとも爆発して共倒れになったそうです。
それからというもの、魔法使いには正面から剣で切りかかっていく人はいなくなったのです。
話を戻しましょう。
基本は貴族以外は測定の儀式を行わない。だから平民で魔法を使える人はいない。ただ、ごく稀に貴族以外にも魔法を使える人が見つかるのだとか。適正を自分で理解する必要があるから本当にごく稀なことらしい。
自分が使える魔法を知ることができる魔法適正測定を一週間後に控えた私が浮かれない訳もなく。
一週間後に自分がどんな魔法が使えるのか気にならない人なんていないよね。
そうして朝目を覚ました私は鼻歌を歌いながら洗面所へと向かった。
「アンナ、ミサ、おはよう。」
「お嬢様、おはようございます。」
目に付いたメイドや執事達に言葉をかけつつ、洗面所についた私は顔を洗いながら鏡で自分の容姿を見る。
髪の色はお母さんによく似た鮮やかな銀色で、セミロングぐらいに綺麗に整えられている。
顔も前世の私とは大違いで透明感のある澄んだ白い肌。美しく整った顔のパーツ達。
目の色はルビーでも入っているんじゃないかと言わんばかりの赤眼。
自分でいうのもあれなんだけど、
もし天使が地上に舞い降りたらこんな感じの顔なんだろうなぁと思うぐらいに可愛い。
何回見ても可愛いと感じてしまう。
ただ、1つ気になるとしたらこれからの身長の伸び。
前世の私も高校生1年生にして145.0という小ささ。
これをチビと呼ばずしてなんと呼ぼうか。
転生後の身長はといえば平均よりは低いらしく、もう半分くらい諦めの境地には入りつつある。
そう、私は前世で学んだのである。希望は持つだけ無駄なのであると。
...まぁ小さい方が可愛く見えるし?あんまり気にしてないからね?
ただ人から指摘されると少し...いや、結構メンタルにくるものがある。
こうやって当たり前のように水を出して顔を洗っているけど、この世界には水道なんてものはもちろん存在しないから、魔石という動力の代わりのようなものを使っている。
水を出したければ水の魔石、火を使いたければ火の魔石。周りを照らしたかったら光の魔石。
そういった感じで魔道石にそれぞれの魔力を込めたものが使われている。
この世界では生活に欠かせないものである。
すると近くにいた私のお付きのメイド、リアナが私にタオルを差し出す。
「どうぞ、ルーナ様。」
「ありがとう、リアナ。今日の予定について教えてもらえる?」
そう、私も仮には貴族という身分。将来に向けて色々な習い事をしている。
ピアノは前世でもやってたから得意だったけど、ダンスとかヴァイオリンとかは最初の方は全然できなかったけ。勉強もお茶のこさいさい。
ただ、当たり前だけど史実に関しては全然違うからまるっきり覚え直し。数学や理科といった理系とよばれる部分は全然発達していないみたいで、私が今やっているのも桁の大きい引き算。これでも私が頭良いから難しい問題をと出されているらしく、普通私ぐらいの歳の子は2桁+2桁の足し算を解いているらしい。
大人になってもできるのは私が前世で習った中学1年生レベル。
あまり数学者がいないみたいで足し算は誰が思い付いたのかも分からないレベル。
そんなすごい人を誰も知らないなんてこの国はどうなってるんだって思っちゃう。
一応魔法学校の試験で使うから勉強してるけど正直面倒くさい。
「今日は午前中にダンスとヴァイオリンのレッスンがあります。午後からの予定はありません。」
「両方結構体力使うレッスン...でも午後は空いてるから大丈夫かしらね。」
午後からは妹達と遊びたいなぁ...予定空いてるかな?
「さ、まずは朝ごはんを食べに行きましょう。話はそこからね。」
ガチャ
私がドアを開けて食堂に向かおうとしたその時...
ドン、となにかにぶつかった。
「いてっ!誰だ!?この俺にぶつかってくる命知らずなやつは!?」
......やば、1番ぶつかっちゃいけない人にぶつかっちゃった...
「お、お兄様、おはようございます...」
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