27.二度目の談話

キリシマとバーレッドで敵の行動封じとみねうちをし、とどめをルタにささせる。

この方法で大熊狩りを続けた一行の思惑通り、初心者未満だったルタのレベルは35となった。

ソロで遊ぶプレイヤーがストーリーモードをクリアしたときのレベルと大体同じで、一通り自分でやりたいことが出来るようになる頃のレベルともいえよう。

普通ならばこの辺りでより強者との戦いや交流を求めてギルドに加入するのが、LSOのオンラインモードでの遊び方だ。


ルタにはキリシマからギルドメンバーの証である水晶の首飾りを贈った。

ギルド名にちなんだ翼を持った蛇が彫り込まれている特品で、彫刻師のスキルをマスターしたギルド長にのみ作成できる物だ。


「大切にします! ご主人さ……じゃなくて、ギルドマスター!」


これをNPCであるルタに贈れるということ自体、バーレッドとキリシマには意外な発見だった。

ルタは手伝い屋というNPCなのに、ここまでやってきた事はまるでプレイヤーと変わらないのである。

二人が初心者プレイヤーとの交流で行ってきたそのままのことを思い返しながらやってあげているだけで、特別な事は何もしていない。

こういったことがNPC相手に出来るということ自体がゲーム時代には無かった。

二人が知らなかっただけでいずれは導入される予定だった機能なのかもしれないが、サービス終了となった今では確かめることはできない。


だが、ルタはどうだろうか。

間違いなくプレイヤーたちと遜色なく交流し武器を装備し、自分たちのパーティやギルドに加入して一緒に戦うことだってできたではないか。

単なるプログラムだと思っていた少年の偶像が目の前で泣いて笑って息をしている。

一体どういう仕組みで彼は動いているのだろう。

自分たちと同じようにここに居るのだろう。


「ほ、ほっぺいたいれしゅ……」


考え出してはまだ夢の中なのではないかと、ついルタの頬をつねりながらキリシマが唸る。


「ああ。すまなかったな」


「いいえ。大丈夫ですご主人さま。ところで次はどこで冒険をなさるのですか? ご主人さまのおっしゃっていた、ご主人さま方にも倒せないエネミーというのは一体……」


「それなんだけど。それじゃあ作戦を伝えながらルタくんにも詳しく説明するね」


酒場の席を今度は三人で囲み、ハムを乗せたバケットを注文しながら二度目になる現状把握が始まった。

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