24.お願い


「では、貴様に新しい仕事をくれてやろう」


「おっ、おおおお仕事ですか?!」


「いちいちどもるな。うっとうしい」


「すすっ、すみませぇん……」


キリシマとルタのやり取りはまるで漫才のようだ。

少し横暴な主人のせいで涙目になりっぱなしのルタには可哀想なコンビだが。と、バーレッドは苦笑いで見守る。

ぺこぺこと頭を下げるルタに対し主のキリシマは彼の顔に照準を合わせて分析画面を開くと、


「ルタ、貴様を我等のパーティに迎え入れる。悪漢(エネミー)討伐に同行してもらうぞ」


ビシッと指差しポーズを決めながら新しい仕事の内容を告げた。


「エーーッッ?!!! そ、そそそれって! ご主人さま方と一緒に冒険して戦うってことですかぁ?!!!」


彼の宣言にルタはきゅうりを見て総毛立つ猫のように驚いて飛び退き、


「む、むりむりむり! 絶対むりです! 自分なんて! し、しし死んじゃいますよぉ!」


目から益々大粒の涙を噴出。鼻水のおまけつきで。

両手を顔の前で一生懸命振り、無理を連呼した。

「ふむ」と眉をひそめるキリシマの横でバーレッドも表示されたルタのステータスを覗き込み、彼が気後れしている理由を察っする。


手伝い屋:ルタ・イィロソ。竜人族。回復士。レベル8。装備品なし。

特殊スキルは治癒魔法。対象一人のHPを30パーセント回復する技能。

加えて、アイテム類の管理倉庫機能。サイズや重さ問わず200個までの道具や装備品をカバンに所持出来る。

以上。


「確かに心もとないですね……」


「そうでしょう?! わかってくださいますか? バーレッドさん!!!!」


ルタは声を大にして同意を求め訴えたが、バーレッドもキリシマの作戦に一度賛同した人間だ。

ルタを戦闘要員に招き入れることに賛成できるかと言えば首を傾げたくもなるが、何かしら考えがあるのだろう。

ともなれば、キリシマを信じよう。

バーレッドは爽やかな表情でルタの前に片膝をつくと、


「大丈夫。君を死なせはしないよ。僕らが守るから」


頭を垂れて同行を乞い願う。

まるで騎士の誓いのような所作に思わずルタも泣き止んでたじろいでしまう。


「でっ、でも……っ!」


「貴方は死なん。我々がついているのだぞ?」


「う、うぅ~~……わ、わかりましたよぉ……」


強い口調で言ってからバーレッドに続くキリシマ。

命令を一方的に出すだけだった主達が自分に頭を下げて頼み事をしている。

生まれてからこれまでに一度も見たことのない今の状態に、ルタも了承せざるを得なくなってしまった。


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