23.竜人の子
「ご、ごごっ、ごしゅじんさま?! う、うわあああああん! ご主人さまぁ~~~~っ!」
その少年は声を掛けると同時に泣き出してしまった。
三日間あてもなく人の往来する中をさまよい続けていたのだろう。ぼさぼさになってしまった豊かな金髪の下の短い眉はとれてしまいそうなくらい困った方向に曲がっている。
水以外の物を口にしていなかったから、というよりも目標もなしに歩き回って疲れたストレスのせいだろうか。
食べ物を与えるまで彼は年齢よりも一段老けて見えていた。
「コホン。では、紹介しよう。彼が竜人族の回復職(ヒーラー)、ルタだ」
キリシマが痩せ気味のほっそりとした少年の突進を抱き留めながらバーレッドに紹介する。
「る……、ルタ・イィロソ。です。こんにちはご主人さまのご友人、さん……」
臆病な性格に設定しているとは言っていたが、何もしていないうちからかなりの警戒心。
十歳にやっと届いたであろうかそのくらいの年齢のルタは、体の半分以上をキリシマの後ろに隠しながらバーレッドにお辞儀をした。
市場の人混みから離れた裏道で膝を抱えて座り込み、ホームレスのようになっていた彼がキリシマが言っていた放置した新人手伝い屋のようだ。
LSOにおいて回復職の職業選択が可能であり、それ以外の職種につくことが出来ない特異な種族となっている二種族……有翼族と竜人族のうちの竜人に相当する種族の少年だ。
身体的特徴としては白人系の綺麗な顔の横にいかつい角が生えていることと、小さいながらドラゴンの尾や翼を持っていること。
寿命が他の種族と比べて若干だが長く、少年程度の体躯でも二十歳相応で、大きくなるにつれて首や顔に鱗のような模様が出てくること。その他にも性別や名前の決め方などがLSOの公式ホームページに掲載されており、存在自体がストーリーモードのネタバレ的な種族だ。
「あのっ、あのっ、ご主人さま……迎えに来てくださりありがとうございます。自分、その、何をしたらいいかもいつお屋敷に帰ったらいいのかもわからなくって……。きっと、ジェリー先輩たちだったら何も言われなくてもご主人さまの必要としている物がわかるのでしょうけれど、自分にはまだ見当もつかなくって、その……」
ルタなりにキリシマへ意見している……というよりも泣きながら言っているので、「もうこんなことしないでください」と念を押しているような感じだ。
ちなみにジェリーというのはキリシマが一番最古に雇った手伝い屋で、ギルドハウスのメイド長の役目を与えている人間だ。
なるほど、そういった古参や新人の設定も反映されるのだな。とキリシマは必至なルタの訴えを聞きながら考えていた。
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