21.ギルド設立の想い
「仲間を増やすぞ。俺達にはまず回復職が必要だ」
考えなくてもごらんで一発だ。一人より大勢は強いに決まっている。
未知の敵と戦うためにキリシマが第一に提案したのはこれだった。
単純明快な足し算で誰にでもわかる攻略方法で、自分のギルドに参加した初心者の全てに彼がこの言葉を言っていたのをバーレッドも覚えている。
指南でもアドバイスでもなく、ダンジョンの強敵に勝てず行き詰まったら当たり前のこと……パーティ編成を見直せ。だ。
オンラインゲームだけでなく、ずっと昔の家庭用機器で遊ぶレトロなRPGにさえそうある。誰もが言われなくても自然にしていること。
それでも、存外それが出来ないLSOプレイヤーはキリシマが知る限りかなり多かった。
一人用オフラインのストーリーモードが存在するため、物語上伝説となった自分ならば一人でどうにかなる。と思いがちな作りをしている。
オンラインのマナーも乏しき若人たちは、一緒に始めた友人辺りと適当に二人で攻め続ければ押し切れる。と、思い込んでいて、実際行き詰まるまではそれでなんとかなってしまっていた新人がほとんどだ。
それとは別に、他人を誘ってパーティを組むという行為自体に高いハードルを感じていて、それをするくらいならば単身で遊べるコンテンツだけ楽しんでいようという少数。
そして、後者のようなプレイヤー同士を繋いで後押しをしたり、上級プレイヤーたちが助言や実際の攻略方法を見せながら同行したりすることを促すのがギルドの役割。
特に翼蛇の杖は初心者や中級者、その他の猛者たちが隔たりを感じさせることなく共に切磋琢磨する場所として設立したため、キリシマはプレイヤー同士の交流に重きを置いてそう教えていた。
仲間同士の友好さや結託、調和を大切にするギルドにしたいというキリシマの願いは彼が「里の掟を破り追放されてしまったはぐれ者のエルフ」だからという哀・悲しい’設定’がある(そのわりに名前が和名なことも誰一人ツッコミをいれていないほどの認知度)のを知るのは若干名程度だったが、それでもギルドマスターの想いは伝わっていたと、三か月程度の短い付き合いのバーレッドでも思う。
――――そして今、それとは別の問題を抱えてしまった玄人二人。
彼らは解決のため、賑やかな市場の人混みをかきわけてとある人物を探していた。
「回復職って……半年前から登録制限されてるのにそんなに都合よくいるものなんですかキリシマさん」
「ああ。我の心当たりが間違いなければこの辺りで迷子になっているはずなのだ」
「ま、迷子ですか?」
鎧の男を攻略するため、キリシマの提案で回復魔法が扱える人物を仲間に引き入れることになった。
前衛を守る剣士のバーレッドと後衛から大技を放つ魔法使いのキリシマ。耐久や火力には申し分ない。そうなれば次に必要なのは、傷を癒し戦闘力を維持するためのHP(ヒットポイント)回復係だと考えた。
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