20.作戦変更
「……もしかしたらモンスターじゃなかったりして」
「シャーロッテに飼われているのに魔物ではないのか?」
「例えば彼女に雇われたNPC(ノンプレイヤーキャラクター)の用心棒とか見張り番とか。人間の可能性もあるじゃないですか」
「しかし、NPCが魔物の出るダンジョンでの見張りを承るのだろうか? いくら強いとはいえたった一人で……」
二人は自分たちの言っていることにいまひとつ確信を持てていない。
交互に意見を出し合ってみるのだがどれもピンとこないようで首を傾げるばかりでいる。
ここでいくら予想をしていても埒が明かない。
「百聞は一見にしかずですね。実際にその鎧の男を僕も見にいくしか……」
と結論をバーレッドが言い、キリシマもそれに頷く。
賛成ではあるのだがそれに付け加えるように続けるには、
「見に行くのではないぞ。再戦で打ち倒すのだ」
強い気持ちの込められた台詞。悔しいという彼の心が滲み出ている返しに、
「そう、でした。倒しにいきましょう。僕らで」
とバーレッドも言い直す。
負けたまま、逃げ出したままではいられないという強い信条が彼らにはあったようだ。
バーレッドがキリシマのことを情けないと一辺倒に思わなかったのもここにある。
相手が誰であろうと関係ない。今ある事実は見知らぬ強敵を前に敗走してしまったということだけ。
それだけが二人の男に行動を起こさせるには十分な出来事(イベント)なのだ。
他のプレイヤーたちが別のゲームへと旅立っていく背中を見送り、ヴァロランド風情に危険に晒され壊されてしまった、運営にさえ放棄されるのを待つだけになった世界。
このLSOに居残りを続けた諦めの悪さや根強さは二人とも廃人の一品。一級品以上の負けず嫌い。
そして、勝つための手段を編み出す思考も二人とも共有している。
やられたままやり返さないわけにはいかない。
本当ならばLSOを終わらせた運営やヴァロランドに向けたいと思っていた復讐心がバーレッドとキリシマを繋いで火をつけていた。今ばかりはその種火の一部を謎の鎧に向けて放ってやるのだ。
「そうと決まれば」
新しい作戦を思い付いたとキリシマが得意げないつもの表情を蘇らせ、開いていた魔物図鑑のウィンドウを消した。
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