8.最後の時

「さて、この人工の風景ともお別れだし俺は夜風に当たってくるわ」


「えっ? どこに行くんですか? スクルージさん」


「放っておけ。最後ぐらい好きにすればいいさ。ルージは風のように囚われない、そういう男だ」


スクルージは女子たちに手を振り「お先に」と席を立って建物の外へ向かった。

あっさりとしてはいたが、その様子はどこか死期を悟った動物を連想してしまうようなやるせないもの悲しさを感じさせ、彼の背中を見つめながら唖然としていたキャロにキリシマは声をかけた。


「さぁ、戦友たちよ。最後の時だ。何か言い残すことはないか?」


「キリシマさんが言うととどめを刺す前の悪役みたいね。でも、まぁ、ありがとうみんな。あなたたちのお陰で最後までLSOを楽しく遊ぶことができたわ」


「自分もっす! 辞めちゃった仲間もいたけど、キリシマさん達に連れて行ってもらった季節イベントとか、すげー楽しかったっす!」


キリシマが芝居がかった仕種で腕を広げて天井を仰ぐ。

その様子を見て、皆口々に感謝を述べ始める。

天使の羽を装備した回復職の美女・かなでを皮切りに、活発な舞踏家の少年・全自動卵割り機が続け、


「私も! お世話になりました! 色々、ゲームの中のことでもキリシマさんやバーレッドさんに助けて頂いて……たくさんたーっくさん、ありがとうございました。リアルのことも相談に乗ってもらったりして、みんなのアドバイスでお父さんとも仲直りできたし。だから、LSOは私の大切な思い出です!」


オレンジ色のポニーテールを揺らして技工士の飛鳥が早口に言う。

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