6.翼蛇の杖
***
日本時間の二三時四〇分。
一月三一日。
LSOサービス停止まで二〇分を切った頃。
「しっかしこんな形でLSOが終わっちゃうなんて思いもしなかったな~。やっぱり嘘でーす。ってならないかなぁってずっとさぁ、夢オチ希望してるわ、俺」
「私もです。これからどうしよう。新しいゲーム始めるって言っても、ここの思い入れが半端なくって」
「そうですよね……やっぱり寂しいなぁ」
自由参加型ギルド・翼蛇の杖。
メンバーは出入りが自由で、お喋り好きのチャッターが多いこともあり元から集まりが良い方だった。
ヴァロランドの公開処刑を恐れて退会してしまったメンバーもいるにはいる。
だが、サービス終了が告知されてから変わることもなく遊んでいるプレイヤーがこのギルドにはまだいるほうであった。
最終日の今日もリアル学生組は一八時頃から、成人組は二一時頃からログインしていたし、それ以外の参加者も好き勝手に現れたり去ったりしていた。
ここに今残っているのは、終了を見届けてから眠りたい。と思っている数名だ。
「せめてストーリーだけでも最後まで見たかったなぁ」
「ねー。キャロと私、まだレベルも50いったばっかりだし行けるとこやっと増えてきたとこだもんね」
「まあ他のゲームで活かすとするかなぁ」
「他って、次何やるか決めてるの?」
「まだ全然。オススメとかあります? 出来ればチャットが盛んな所がいいなぁ。でも出会い系とか変なのに誘われないとこ」
「ふん。愚か者共め。我のように堂々と構えてはおれんのか」
「あっ、キリシマさんは最後(ギリ)までその痛いキャラ貫くんすね。笑える」
クエストを受けようにもあと十数分も無く、得た報酬を受け取っても使用することがない。
|翼蛇の杖(カルドケウス)のメンバーは皆、思い思いの談笑をかわしながらサーバーが停止する二四時を待っていた。
チャット欄に名前が残っているのは、ギルドマスターのキリシマと、副リーダーのスクルージ、その下にバーレッド。
この三人はギルド内でもレベルが一番高く三人ともに90とカンストしている。
魔法職に強いこだわりを持ち、キャラクター設定に忠実なプレイスタイルを貫く……いわゆるこの世界で作ったキャラになりきったロールプレイを徹底しているキリシマと、実生活では嫁に隠れてこっそりログインしていたという会社員のスクルージ、別のギルドに所属していたが最後まで一緒にLSOを楽しめる人を探して三ヵ月ほど前に移籍してきたバーレッド。
全員レベルカンストに恥じない実力者でもあり、最終日までの一ヵ月はモンスター討伐ランキング上位にも載り続けていた。(遊んでいる人が少なくなったともいえなくはないのだが)
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