第3話

人がいた。


他の教室に比べて少し低くなっている、窓の桟。そこに人が腰掛けていた。細い体躯が気怠げに枠にもたれかかり、弛緩した足は床と窓の外に伸びて、片方ずつ、明るい外と暗い部屋を楽しんでいるようだった。


深い陰影ができた顔が、僕に向けられている。夕日を背負って微動だにしない姿に、一瞬、生きたものでないような錯覚を覚えた。凝視する。


真っ赤な目が瞬いた。

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