第4話
初デートから1か月たった。
今日は日曜日。だから今日もデートしていて、本当はうちに連れて来て、夕飯を家族と一緒に食べるつもりだった。美人の彼女を家族に自慢したかったのだ。
しかし、うちの近くまで来たところで雨が降り出し、彼女は突然予定をキャンセルして家に帰ってしまったのだ。
考えてみると、彼女はいつも雨をひどく嫌っていた。雨の日は必ずデートをキャンセルした。不思議だった。
拍子抜けした僕は、そそくさと家に帰った。今日はあれだけ彼女を家に連れてくるって言ってたのに、家には誰もいなかった。冷蔵庫からペットボトルのコーラを取り出し、2階にある自分の部屋に駆け上がった。僕はベッドの上に座り、壁にもたれながらスマホで彼女にメッセージを送った。
『今、どこ?』
しばらく返信を待ったが、返事はなく既読にもなっていなかった。おそらくまだ移動中なんだろうと思った。ペットボトルの蓋を開け、コーラを一口飲んだ。その時、玄関のドアが開く音がした。母親のようだった。そして1階から僕を呼んだ。
「流星、いるの〜?、彼女さんも〜?」
僕は大きな声で返事した。
「今日は来ない、キャンセルになった」
カーテンを開けて窓の外を見ると、夕方なのに薄暗く、雨は激しさを増していた。しばらく窓を打ちつける横なぶりの雨を見ていた。
その時、ピコンッという音がスマホから鳴った。
慌ててベッドに放り投げていたスマホを見ると、彼女から返信が来ていた。
『家に着いた』
『よかった!雨がひどくなって来たけど、濡れなかった?』
『本降りになる前に、着いたから大丈夫』
『今から何するの?』
『夕飯の支度』
『料理できるんだ!すごいね!今日は何作るの?』
『豚肉の生姜焼き』
『美味しそう』
そこでメッセージは途切れた。彼女は料理の支度を始めたんだろう。こんなささいな彼女とのやり取りでも僕は嬉しかった。
スマホでゲームをしていると、下から母親が僕を呼ぶ声がした。
「流星、ご飯ができたよ!」
腹が減っていた僕はすぐに階段を駆け下りた。キッチンのテーブルにある料理を見て驚いた。
「豚肉の生姜焼き……」
彼女が今日作ると言っていたのと同じ献立に驚いて、テーブルの横で立ったまま生姜焼きを眺めた。
「流星、大好物だったわよね?」
「うん、まぁ……」
「大盛りにしといたわよ」
僕はテーブルを挟んで母親と向かい合って、夕食を食べた。
夕食の後、僕はキッチンのテーブルに座ったまま、スマホを握り彼女にメッセージを打った。母親はキッチンとつながったリビングのソファでテレビを見ながらスマホをいじっていた。
『ご飯食べた?』
『食べたよ』
『今日はこれから何するの?』
『特に、何も。少しくつろいだら、お皿を洗うくらいかな』
『偉いね!』
『ありがとう』
『早く会いたいな』
『もう会ってるけど?』
これはどういう意味なんだろう……?今日昼間会ったじゃんって意味なのかな……。
『好きだよ』
『気色悪』
えっ?なんだこれ?打ち間違いか?なんて打ち返そうかな……ここは軽く冗談で受け止めよう。
『ははは(^∇^)毒舌キャラだったっけ?』
『いや、マジで気持ち悪い』
僕はその一文に顔面がフリーズした。
彼女キャラ変した?酒でも飲んでる?
そう言えば、さっきから僕がメッセージを送ったタイミングで母親のスマホがピコンッと鳴ってる気がした。
思い切って彼女に電話をかけてみた。
その瞬間「うわっ!」と母親は慌ててスマホから手を離した。
僕は立ち上がり母親に言った。
「なんで母さんが彼女のスマホ持ってんだよ!」
「バレたか」
「バレたかじゃねーよ!」
「たまたま家の近くに落ちてたのを拾ったの。そしたら流星の名前があるし、面白そうだなあと思って」
「どこから彼女になりすましてだんだよ!」
「『家に着いた』あたりから」
「結構早い時期からじゃねーか」
僕はずっと彼女と思って母親とメッセージのやり取りをしてたのだ。顔を真っ赤にしながら僕は彼女のスマホを母親から取り上げて、2階にある自分の部屋に戻った。
確かに見覚えのある彼女のスマホだった。自分と母さんのやり取りの履歴が消せないか、彼女のスマホを操作した。
そして僕は良心の呵責を感じながらも、妙な胸騒ぎがしてスマホの画像ホルダーを開いた。ひとりのスッピンの女性の写真が複数枚入っていた。
誰だ、これ……?
その中に動画があった。再生してみた。
僕は動画の内容に驚いて、息が出来なかった。
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