第一章 『勇者』と『聖女』?7

[エレオノール視点]


 バル様が僕らと手を繋いで、王太子宮の案内をしてくれました。

 後ろからは護衛の騎士の人が二人付いてきてました。

 僕達に一人ずつ何だって。

 僕には金色のサラサラしてる長い髪を後ろで一つにしてる、優しい翠色の瞳のグランさん。

 ノーラには、短い茶色の髪で赤い瞳のオリクスさん。

 二人とも村に迎えに来てくれた騎士さんだったよ。

 僕達と一番仲良くしてくれた二人だから、ノーラも嬉しいみたい。


「あちらに神殿が見えるだろ?明日はあそこで、二人の装備の確認をするよ」


 少し見えにくくて、ノーラとちょっと背伸びをしてたら、バル様は両手で僕達を軽々と持ち上げて、肩に座らせてくれたんだ。


「うわぁ、たかーい♪」


 ノーラはすごく嬉しそう。僕も嬉しい。

 だって、こんなに高くて二人一緒に肩車してもらうのって、初めてなんだもん。

 僕達が喜んだせいかな?バル様、そのまま案内してくれたよ。


 色んな花の咲いた庭園とか。レン様の騎士団の訓練所とか、レン様の部屋も入っちゃった……。いなかったのにいいのかなって聞いたら、レン様から案内するように言われてたんだって。

 後ね。レン様の婚約者の人にも会ったよ。

 ノーラとおんなじ黒い髪で、おんなじ青い瞳。

 隣の国のお姫様なんだって。

 サラディール様ってお名前で、すごく綺麗なお姫様。


「『サラ姉様』って呼んでね♪」


 って、言われた。僕は恥ずかしくて無理だったけど、


「サラ姉様!」


 ノーラはすぐに呼んでたよ。僕はしばらく『サラ様』で許してもらったよ。


 そこからはサラ様も一緒に歩いて、最後はレン様とご飯を食べる部屋に着いた。

 四人で食べるんだって。


「「…………」」


 広い大きな長四角のテーブルの一番向こうにレン様が座ってた。

 並べられてた料理は見たことないくらい美味しそうなのばかりで、たくさんあった。

 レン様より離れた所に二人分。レン様の側に一人分が置いてあるから、離れた場所が僕達の場所だよね?って、ノーラと座ろうとしたんだ。


 そしたら、サラ様が僕達の手を握って、一緒にレン様の方へ歩いてった。


「レンったら、こんな小さな子達と離れて食べるなんて!一緒に食べる意味がありませんでしょ!」


 って、レン様も立たせたの。


 レン様の隣に僕。レン様の反対側にサラ様。その隣で僕の反対側にノーラが座る形になったよ。


「さあ、これでいいですわ♪」


 でも道具がたくさんあって、どうやって食べるのか分からない僕達に、サラ様は優しく教えてくれた。


「この子達のマナーは誰が担当しますの?」


「基本的にはバルだな」


「あら、バル様に女の子は無理でしょう?わたくしがしますわ」


 にっこり笑ったサラ様。レン様は困った顔をしてた。


「…レン兄様…。サラ姉様はダメなの?」


 ノーラが不安そうにレン様に聞いた。


「……はぁ。ダメだと言えば、サラやノーラに恨まれそうだな。いいよ、マナーはサラに任せよう」


「「っ!!」」


 僕とノーラは嬉しくて思わずお互いを見て笑ったんだ。


「「……尊い………」」


 聞こえてきた声にノーラと二人、隣を見ると、レン様もサラ様も両手で顔を隠してた。


 ご飯を食べてから部屋に帰ると、さっきの人とは別の人達がいた。

 侍従さんは元気なおじいさんって感じの人で、グイードさん。

 侍女さんは村の宿屋の女将さんみたいな感じの人で、ダリヤさん。

 お風呂に入れてもらって、ノーラとベッドに行くと、すっごく大きなベッドがあった。


「うちのベッドが四つくらいくっついたみたいな大きさだね…」


「……ノーラ。ポンポン跳ねるよ、このベッド…」


 ノーラと二人、じっと目が合った。


「「…………」」


 ウズウズしてきたのは、きっとノーラもおんなじだったよね?


「「キャー♪」」


 僕達はベッドの上をポンポンと飛び跳ねた。


「何事ですか!?」


 ダリヤさんが怖い顔で部屋に入ってきた。


「「「…………」」」


 ビックリした僕達は、ダリヤさんと見つめ合った。


「レオノーラ様。エレオノール様…」


 にっこり笑ったダリヤさんに名前を呼ばれた。

 笑ってるのにすごく怖いのは何でかな?


「「はい……」」


 思わずきちんとベッドの上に座ったよ。


「ベッドは飛び跳ねて遊ぶ場所ではありません!」


 ーー叱られちゃった…。


 くしゅんとなった僕達。


「……ですが、このようにフカフカのベッドは初めてでございましょう。跳ねてみたくなるのも分かります。ですから、今だけは許してあげましょう……」


 そっと顔を上げると、片目を瞑ってこっちを見てるダリヤさんと目が合った。


「今日だけ…でございますからね!」


 僕達はしばらく飛び跳ねて、疲れて寝転がってたら、そのまま寝てしまってた。


 朝、起きたらノーラと二人、ちゃんとベッドの中にいた。

 後でちゃんとダリヤさんにお礼を言わなくちゃね!




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