第6話 明日の子どもたち、ネタバレとともに
有川浩さんの明日の子どもたちを読んだ。
周りに読書好きな友達が居ないからここに感想と思ったことを書こうと思う。
まず、印象に残った言葉から。施設長福原が施設に入所したばかりの久志に言った言葉。人生は一度しかない。だけど、本は他の人の人生を追体験できる。この言葉はどこか有川さんからのメッセージのように思えた。本はドラマや映画、アニメ、漫画と異なり文字だけで表現される。純粋に文字だけで伝える本はごまかしがきかない。雰囲気でながすことができない。だから、主人公たちの心情が細やかに描かれる。本は他の人生の追体験。いろんなことにいちいち意味を求めるのは好きじゃないけど、本を読むことの意味としてこれはひとつありかもと思った。
また印象に残った言葉について。違う世界があるのではない。一つの世界に違うものがたくさんあるだけ。気にしない、ではなく分かったといえること。
違いを気にしない見ないことにするのではなくただ受け入れることで救われる人がきっといる。はじめは繰返されるこの言葉の意味が分からなかったが、じぶんに当てはめたときにすっと心が軽くなる感覚がした。
最後に、この本を読みながらなぜ有川さんは児童養護施設を題材にした本を書いたのか不思議だった。作中では小さなトラブルは起きるが、有川作品によくあるような大きな事件、日常生活では滅多にないような出来事が起きない。ただ、施設で起きたことを人々の感情の動きと共に綴られているだけ。
しかし、最後の手紙を出そうとしたところで分かった。そして、思った通り、実際に有川さんのもとに送られてきた手紙が題材であったということが、解説に書かれていた。
解説には実際に手紙を出した女性のことばが載っていた。この解説を書いた女性は当時私と同じ大学生で進路に悩む様子が伺えた。そこで今まで読んできたことがいきなり自分に近づく感じがした。自分と同じ悩みを抱えている。小説として楽しんでいたが一気に自分と重ねてしまう。この小説の奏子と久志も私と同じ悩みを抱えているのだろうか。
この本を今読んだことに何か運命的なものを感じた。
ベッドタウン 伊勢ゆうき @osncb479
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