第十六話『反転消滅の反動』
アルカナが作成された直後、
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南半球の中心、所謂南極点に存在する城に眠る王座の骨に異常が始まった。
魔力がチリチリと蛍のように揺蕩った途端、爆発するように汚れた王座の間の中を汚れだけ吹き飛ばす。
ひび割れていた天井が、破けていたカーテンが、巣食っていたゴブリンが、すべてが吹き飛び、本来の姿を取り戻した。
天井は黒紫色に輝き、カーテンは縁は真っ白、中は赤色に。
余った魔力が形どり、漆黒の騎士を作った。
骨は肉が付き、内蔵が付き、目に光が宿り、皮が生え、髪が伸びる。
全裸の体にローブが中空から生えるように巻き付き、少女の体に纏わる。
漆黒の肌に、真っ白の髪の毛、黒主体のローブには黄色のマークがいくつか刻まれ、白い線が走っている。
「ふん…我、復活…」
なぜか常にジト目な目のままで王座に肘をつけて座ったまま、フンスと鼻を鳴らした。
…本来ならばこう…物語のラスボス!的な登場のはずだが…ギャグ感があるのはなぜなんだろうか。
「やったぜ…もう一回、夢、追えるや…」
グイッと立ち上がると王座の後ろの窓を開けて、外を見る。
「あるぇ…時間たちすぎじゃね…」
ほえ?と、阿保顔晒しながら少女は困惑し、何度も瞬きをする。
城の外は完全なる荒野だった。
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「教皇様!教皇様ぁ!」
煌びやかな大聖堂の最奥の間、かつて、人之王と呼ばれた者の遺骨が玉座に座った状態で安置されている、開かずの間が唐突にその数トンもある石の扉を轟音を立てながら開かせていった。
教皇や神官たちが急いて集まる中、けして朽ちない純白のローブと滑らかな杖、真っ白な水晶玉のような神玉を持った状態の白骨死体から神聖力が瞬き、周囲を癒しながら肉を、内臓を、肌を、髪をはやした。
「ん…」
閉じられていた瞳を開けると神聖力が止まり、その全貌が明らかになる。
真っ白な肌に金の髪の毛、瞳はサファイアのように輝くと玉座下に控える教皇や神官を見る。
パッと瞬くように杖と玉が消えると、教皇達に手をかざし、神聖力を放出した。
優しき光があふれると、肥え太っていたものは痩せ、瘦せぎすの者は筋肉が付き、悪事に手を染めていたものは懺悔し、正しき行いをしていた者には力だ宿った。
誰もが彼女に感謝を、そして懺悔をする中、彼女はショボンと口をωにする。
「寝すぎちゃった☆」
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北半球の中心、所謂北極点に存在する巨大な、物凄く巨大な木のうろにすむ精霊の一人に、その木…惑星樹の精霊力が流れ込む。
「はうあ!?」
ビクン!と痙攣する精霊は精霊力に満ち溢れ、徐々にその姿を人に近づけていく。
数十センチ程度だった身長は130センチほどに増え、ショートカットの髪は腰まで伸びる。
絶壁だった胸部装甲は…あー。
いや、ほんの少し…は、うん。
増えてるかなぁ?
緑の髪の毛の全裸の少女がペタンと地面におりると、今まで同僚だった精霊たちが新たなる女王に対して、
茶色の目を瞬かせながら「ふええええ…」と情けない声を上げる少女は、爆発的な精霊力を放出し続けていた。
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大森林、半径およそ数百キロ以上のその森のボス、
驚く暇もなく、蛇口を叩き壊した水流のように唐突に流し込まれる力に、彼女は悲鳴とも思える声を上げる。
めきめき、パラパラと体が変形し、鱗が剝がれ落ち、体が縮む。
210センチほどに縮むと黄色い膜が彼女を覆い隠し、再び変形していく。
前足の指が1本増え、後ろ脚の指も1本増え、肌の色が緑から茶色に変わっていく。
顔の骨が音を立てて、より動きやすくなるように変形していく。
鬣が頭以外抜け落ち、筋肉の密度が上がっていく。
膜がぴしりとひび割れると、変形する異音も消え、そして、バキンと幕が割れ、消えた。
灰色の髪の毛に黒色の目の中に浮かぶ縦に避けた真っ赤な瞳孔。
茶色い肌には鱗でできた鎧が付いている。
「…ふふん、また、強くなったか。」
腕を組んで笑う少女は…うん、なぜだろうか、ギャグ感が拭えなかった。
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七つある次元の七つ目の次元、完全に漆黒の木々の森の中に立っている館の執事がピクリと、お茶を入れていた手を止め、振り向く。
ポットをカチャリとトレーに戻し、コツンカツンと部屋を出ると蠟燭の一本もない暗い廊下を歩いて行く。
建付けの悪いせいだろうか、ギギイ…と音を立てて開く扉を通り、青白い光の満ちる部屋に入る。
今までの場所と違い、やけに近代…いや、未来的な設備の並ぶ部屋の丸い、まるで地球をホログラムにしたかのようなそれに近寄ると執事は空間を手動で操作しだした。
四色の山のようなグラフが表示され、紫色と緑色が真逆の位置に、白色と黄色が真逆の位置に最も高く表れている。
「ふふふ…お目覚めでしょうか。」
仮面に隠れたその顔は笑っているのか、それとも嗤っているのか…
この出来事を最も近くで最も密接にみているその執事はクツクツとわらいながら、この後の展開を待ち遠しく思っていた。
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