連勤辞めたら錬金神になった ~人生\(^o^)/オワタ からの大逆転~

リディクュ・ルェメント

オープニング『退社した』


 「江藤、お前、なんでデスクから立ってんだ?」


 パワハラ上司こと課長を髪・髭伸ばしっぱなしの外見犯罪者ないし、陰キャの社員が課長のデスクの前に立ち尽くしている。

 他の社員から仕事の内容の評価だけ高い彼は、この会社のデスクワーカーで、3年前から勤務している。

 他の人の分まで働く彼は、寝ても覚めても病気でも怪我しても出勤し、新人歓迎会も断り、祝日出勤し…365日、三年間毎日出勤した。

 言葉の通り、365×3+1、1096日連勤。

 部下の中ではクズで有名な課長は仕事したいだけさせ、むしろ、自分の仕事を投げるため、労働基準法など隣の国の法律の如く。

 彼を心配し、仕事を代わろうとする者も居たが、彼はかたくなに仕事をし続けた。


「辞めようと思います」


 そんな彼が、こんなことを言うとはその場の誰も予想しえなかった。

 同時に差し出される退職届を呆然と見る課長の頭は何一つ考えられず、真っ白になっていた。


「江藤さん、や、辞められるんですか!?」


「そ、そんな、いきなり…」


「課長、お願いします。」


「え、あ、ああ。」


 他の社員の声でまだ再起動はできていない頭で課長は彼からの退職届を受け取る。

 と、同時に彼はバックを持って職場から出て行った。

 タイムカードを持って。


^^^^^


 三年前、江藤は別企業に勤めるサラリーマンだった。

 当時はしっかり休みを取り、妻と娘もいて、社内では羨まれるような明るい性格をしていた。

 しかし、ちょうど3年前の彼の誕生日に。

 妻が部下の男と逃げた。

 家に帰った彼を待ってたのはお祝いの言葉でも豪華な食事でもなく、机の上にポツンとおかれた妻の名前と捺印の押された離婚届だった。

 次の日の夜、部下の男…昨日退職した元部下の男からロインで届いたのは20分の元妻と娘が男とベッドの上で交わっている動画だった。

 20分の交わいの後に告げられるありもしない彼の浮気の話と二人の後ろでほくそ笑むような顔をする元部下の男。

 全てを察した彼は退職し、この世界を捨てるために辛いが、給料のいい今辞めた職場についたのだ。

 会社のビルを出た彼はまず、事故物件と名高い自分の住むアパートに戻った。

 まだ日の高い時間のため、彼を訝しむような目線がある。

 アパートの部屋に入った彼はまず髭と髪を切った。

 髭は適当に剃り、髪は昔、娘がヘヤーデザイナーごっこと称して切ってくれた時のことを思い出しながらバッサリと切っていく。

 さっぱりとした風貌のまだ若く見えるイケメンに変化した彼はくたびれた顔と服のまま労基署に向かう。

 先ほどの訝しむような目線はなく、逆に彼を心配するような目線が注がれる。

 スマホで検索した労基署に入ると手続きを踏んで元雇用先を摘発。

 社内で(悪い意味で)有名だった彼の退職と摘発により、課長は辞職し、パワハラ・セクハラによる逮捕。

 そして、彼には多額の慰謝料が払われた。

 課長の行いを理解しながらも何もしなかった上司たちは罪悪感はあるのか、迅速に…あまりにも迅速に対応し、必要以上の慰謝料を払った。

 そして彼はその金と今までためていた金を全部下ろし、とある場所に向かった。


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